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おしえてアナリスト

海外石化プラント稼動による影響について~10年度の総合化学各社の業績への影響は限定的だろう~

Q 質問

中東のペトロラービグ稼動や中国での石化プラントの新設計画により日本の総合化学の将来性が不安視されていたと思います。海外石化プラント稼動による国内総合化学への影響を教えてください。

A 答え

ご質問ありがとうございます。結論から申しますと10年度の各社の業績への影響は軽微と考えています。中東諸国を中心とした新増設プラントの稼動によりアジア地域での需給軟化から市況下落が予想されますが、①各社の製品は付加価値品比率が上昇しており現時点で直接的な競合は限定的とみられる、②中国を中心としたアジアでの需要増により1-2年間は供給増加分を含めて吸収される、③各社注力分野の電子部材、医薬関連などの売上回復/伸長が石化減少分をカバーする、と考えるからです。

経済産業省が10年2月23日に「平成22年石油化学製品需要見通しについて」を発表しました。10年の需要見通しについてエチレン換算で前年比0.4%増、プロピレン換算で前年比2.0%減を予想しています。エチレン換算とはエチレン系の石油化学品を対象としており、エチレン(基礎原料)、誘導品である低密度ポリエチレン(フィルム用途)、高密度ポリエチレン(ボトル用途)、ポリスチレン(包装材料用途)、塩化ビニル樹脂(資材用途)などが対象です。誘導品にはエチレンが使用されますが、原単位から換算値を算出しています。原単位とは製品を製造するために必要な原料の割合のことです。例えば高密度ポリエチレンの原単位は1.04ですが、これは高密度ポリエチレンを1トン製造するためにエチレンは1.04トン必要という意味になります。プロピレン換算は同様にポリプロピレン(日用雑貨品用途)、アクリルニトリル(アクリル繊維)などが対象です。同省は09年8月に「世界の石油化学製品の今後の需給動向」も発表していますが、それによりますと07年の世界のエチレン系誘導品需要実績は、1億1,100万トン(生産能力は1億3,000万トン)でした。08-09年とやや落込んだと推測されますが、10年からは07年レベルにまで回復、その後は微増が予想されています。特に中国では07-13年の伸び率は5.7%増と世界全体での2.3%増に比べ高い伸びが予想されています(日本は0.5%減)。

世界需要は微増が予想されていますが、中東諸国、中国での増設は中国での販売を狙っているため、アジアが主要輸出先の総合化学各社にとってはネガティブであることは事実です。4月に入り業界紙の化学工業日報では「中東の大型石化設備が相次ぎ本格稼働」として、サウジアラビアのペトロラービグやヤンブー・ナショナル・ペトロケミカルズに続き、イースタン・ペトロケミカル、カタールのラスラファン・オレフィンが操業に入り、エチレン誘導品を軸に主要市場であるアジアへ大幅に流入するだろう、と報じています。ただ、ペトロラービグは住友化学(4005)、イースタン・ペトロラービグは三菱グループが出資しており過度にネガティブになる必要はないと考えます。

国内のエチレン生産能力は770万トン。内需は500万トン程度で輸出分の大半がアジア向けです。将来的には中東品、中国の製品も付加価値が付くと予想されることから中期的に150-200万トンの能力削減は必要と考えます。ただ、4月に入り国内エチレンセンターの合理化策が発表され始めました。4月1日に出光興産(5019)と三井化学(4183)が千葉地区のエチレン装置の運営統合のために有限責任事業組合(LLP)を設立。続く4月2日にはJXホールディングス(5020)と三菱ケミカルホールディングス(4188)、旭化成(3407)が水島地区(岡山県)で高度統合生産連携事業の実施を発表しました。国内ガソリン需要減に苦しむ石油精製業界と輸出減少が見込まれる総合化学業界の効率化推進策は合理的と考えます。構造改革は時間との戦いだとは思いますが、中国需要は旺盛、中東品の影響が本格化するにはプラント整備面などから、やや遅れると考え、10年度の影響は軽微、11年度は不透明ながらも大きな業績のマイナス要因にはならないと予想しています。最後に総合化学各社の汎用石化の動向を簡潔に述べたいと思います。

旭化成は容器トレーなどで底堅い需給のポリスチレン最大手。ポリスチレンの国内需給は良化傾向であり、また輸送コスト面からも大幅な需要悪化は避けられると考えます。昭和電工(4004)は大分のコンビナートは従来からユーティリティ面でコスト競争力があると見られていますが、5月まで分解炉のスクラップ&ビルドを実施しています。輸出比率も10数%と推測され影響も限定的と考えます。同社は石化事業を電子材料部材などの育成のためのキャッシュカウの位置付けとしています。住友化学は千葉地区はR&Dや生産工程改善のためのマザー工場と高付加価値品製造の位置付けとする方針。シンガポールは付加価値品、サウジアラビアでの汎用品を製造するなど役割分担を推進。東ソー(4042)は国内最大のエチレンバイヤーでもあり原料安はコスト低減につながります。三井化学は各社の中では影響度合いが最も大きいと予想されます。特に高密度ポリエチレンが競合します。10/3期では中東品などの影響は、同社石化事業の売上高で約20%弱と推測しますが、12/3期には影響度合いを1%程度までに削減する計画です。三菱ケミカルホールディングスは国内での汎用樹脂生産は行わないとの方針で構造改革を推進中。世界最適地展開を目指しています。国内生産のポリエチレンは自動車部品向けに差別化ができています。

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