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TIWマガジン「投資の眼」

おしえてアナリスト

投資判断の基準となる適正PERについて ~西村尚純シニアアナリストの回答~

Q 質問

よく「PERが高い」とか逆に「PERが低い」とかが投資判断の基準のひとつにされております。それでは、高くもない、低くもない、言ってみれば当該企業の経営状態に見合った適正な数値はどの辺りと考えればよいのでしょうか。

A 答え

PERは株価の割高、割安を測る指標の一つで、PER=株価/1株当たり利益(EPS) で計算します。またEPSは純利益を発行済株式数(自己株除く)で割って求めます。例えば、株価が500円でEPSが50円のA社株のPERは10倍ということです。同様に株価が400円でEPSが50円のB社株のPERは8倍です。ということは、A社よりもB社の方が割安ということになります。但し、実際にはそう単純ではありません。ご指摘のように、企業の経営状態に見合った適正なPER水準を導き出すのは、簡単ではないからです。そこで以下ではPERを考える上での注意点を述べたいと思います。
①業績モメンタム、中長期成長性が影響を与える
一般的にPERは、今期や来期の予想EPSを基に算出します。もちろん、終わった決算期のPERも算出できます。日経新聞のマーケット総合面にはこうした実績ベース(前期基準)と会社予想ベースのPERが掲載されています。ちなみに、日経225ベースの実績PERは29.38倍、予想PERは15.51倍です(11月22日)。アナリストレポートで、市場平均よりも割安、割高という表現がありますが、その場合は、15.51倍と比較しているのです。しかしながら、予想PER10倍の株が割安で、30倍の株が割高とは必ずしも言い切れません。業績のモメンタムや中長期の成長性が株価に織り込まれるからです。例えば、私が担当するユニ・チャームの株価(11月22日終値)は3,345円です。11/3期の会社予想純利益320億円、EPS169.5円でPERを計算すれば19.1倍となります。ユニ・チャームの成長性が評価されて、数年後の利益まで先取りして、市場平均よりも割高に買われているのです。一方で、成長性に乏しい企業はどうしても評価が低くなりますので、PERは市場平均よりも割安になるのが一般的です。
②業界によってPERに違いがある
業界平均のPERを見ることも重要です。例えば、商社や鉄鋼、海運などは業界平均を下回るPERの水準です。業界各社の業績が市況に大きく左右されるということが低PERの背景にありそうです。業界によって事情が異なるため、個別企業のPERを見る場合は、市場平均との比較も大事ですが、業界平均のPERと比較して、割安割高の判断をされるのが良いと思います。
③妥当なPERを導くのは難しい
PERは予想EPSで計算しますので、何よりも大事なのは業績予想です。会社側の予想EPSで比較してもいいのですが、アナリストはそれぞれの分析を踏まえて向こう2~3期の業績予想を行います。例えば、会社計画よりも上に行きそうという結論に達した場合は、「会社計画は保守的で上振れ余地が大きい。予想PERも割安感がある」と強気スタンスを採ることになります。この場合でも業績予想がおかしければ、株価は割安感があるという結論は間違いということになります。
以上見てきましたように、企業の経営状態に見合った適正なPER水準を計算するのは、容易なことではありません。但し、当該企業のPERと市場平均、業界平均のPERを比較に加え、当該企業の今後の業績見通しを念頭に置かれるのが良いと思います。最後になりますが、PERを絶対視せず、ROEやPBRなど複数の指標を組み合わされて、投資判断されるのがいいと考えます。

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