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おしえてアナリスト

新しいリウマチ治療薬の動向 ~新しいタイプのリウマチ治療薬(生物学的製剤)成長の要因は?~

Q 質問

最近発売された新しいタイプのリウマチ治療薬がいずれも大幅に伸びているようですがその理由は何ですか。企業業績への影響と今後の見通しについても合わせてご教示ください。

A 答え

ご質問有難うございます。本邦におけるリウマチ患者数は約70万人(女性が約8割、働き盛りの30歳代~50歳代に発症することが多いと言われています)、この内抗リウマチ治療薬による治療を受けている患者数は40~45万人と推定されています。即ち患者数が多い慢性疾患なのです。これまでの関節リウマチの薬物療法は、①非ステロイド消炎鎮痛剤(セレコックスなど)、②副腎皮質ホルモン(ステロイド薬)、③抗リウマチ薬(DMARDSと呼ばれるシオゾールなどの免疫調整薬、メトトレキサートなどの免疫抑制薬)などを使い抗消炎薬により痛みを軽減し、抗リウマチ薬により進行を止めることに重点が置かれました。しかし近年④生物学的製剤の開発により病気の治癒・修復も一部は現実的なものとなりました。最近目覚しく伸長しているのはこの生物学的製剤です。
生物学的製剤とは生物から産生される蛋白質などの物質を利用して製造した薬剤で、病気の原因となるサイトカイン(TNFアルファ、TNFベータ、IL-6など)を抑制する抗体医薬品です。最近発売されたリウマチ治療薬では①田辺三菱製薬(4508)のレミケード(発売02年5月)、②武田薬品工業(4502)のエンブレル(同05年4月)、③中外製薬(4519)のアクテムラ(同08年4月)、④エーザイ(4523)のヒュミラ(同08年6月)がこれに該当します。それぞれターゲットとするサイトカインが異なり、かつ治療方法も様々(点滴、皮下注射、自己注射、通院回数、投与間隔などに差異)で、即効性と遅効性の差異も大きくなっています。さらに各薬剤が全ての患者に有効ではなく、A剤が無効であった患者がB剤では有効という実績やまたその反対の事例もあります。一部の薬剤は2次無効(半年を過ぎた頃から効果が低下する)の問題もあるようです。しかし、いずれの薬剤もこれまでの治療薬と比べ寛解率(完全治癒ではないが病気の症状がほとんどない状態)が高く(レミケードの場合50%台前後)、リウマチ治療にとっては画期的な薬剤となっています。
上記4剤の前期(10/3期、中外製薬は09/12期)売上高は①最先発の田辺三菱製薬のレミケードが472億円(前期比+26.2%)、②武田薬品工業のエンブレル323億円(同+22.7%)、③中外製薬のアクテムラ173億円(同2.4倍)、④エーザイのヒュミラ66億円(同3.5倍)となっております。本邦では生物学的製剤の実績が浅く、その使用率が未だリウマチ患者の20%弱(10万人程度)と低いため今後も成長が続く可能性が高いと予想されます。生物学的製剤は10年7月にブリストル・マイヤーズのアバタセプトが承認され本邦では5品目となりましたが、①患者により使用薬剤による有効性に差があること、②長期使用により2次無効の問題が出ること、③それに伴いA剤からB剤への切り替えなどもありうること、などから各社間の競合はそれ程大きくないと考えられます。
これに関連してTIWが注目している銘柄は2つあります。1つは田辺三菱製薬です。レミケードは02年に上市以来、関節リウマチの他、ベーチェット病、クローン病、乾癬、強直性脊髄炎、潰瘍性大腸炎へと適応範囲を広げ売上を拡大しております。この分野では最先発であるため市場をある程度確保していること、調査データなどが積み上がっていることが強みです。競合品が多いとは言え、あと3~4年は成長持続が可能と予想します。但し、レミケードは導入品(オリジンは米セントコア社、現ジョンソン・エンド・ジョンソン)であるため自社品と比べると採算は劣ると推定されます。同社はノバルティスへ導出した多発性硬化症治療剤などパイプラインも比較的充実しているので環境厳しい医薬品メーカーの中では株価の上昇余地が多少残っていると考えます。
もう1つは中外製薬です。アクテムラは他の3剤と違って同社の創製品であるためグローバルに展開できる製品です。09/12期売上高173億円のうち89億円は親会社ロシュによる海外売上です。10年1月に米国での販売が承認されたため今後海外での売上が一層拡大すると予想されます。現時点では関節リウマチのセカンドライン(2次治療、他剤による治療で効果がない場合の治療)に使用されることが多いようですが、他の生物学的製剤と作用機序(作用メカニズム)と異なる点がかえって差別化要因となりそうです。同社の株価変動は主に抗癌剤と腎性貧血治療剤の動向によりますがアクテムラ(特に海外売上)もプラスアルファの要因と考えられます。株価は最近の市場全体の落込みに連動して下落したためバリュエーション面でも割高感が薄れたと見ています。

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