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おしえてアナリスト

レアアースについて ~ レアアースの今後の状況について ~

Q 質問

尖閣諸島沖の漁船衝突事故以降、中国から日本向けレアアース輸出が停止していますが、今後の影響を教えてください。

A 答え

ご質問ありがとうございます。まず、聞き慣れないレアアースについて簡単に説明しておきます。スカンジウム、イットリウム、ランタニド系の17元素をレアアース(希土類)と呼びます。資源量が少ないものもありますが、中には銅より多く存在するものあります。全体的に分離が難しいため、手にする機会が少ないことがレアアースといわれる所以です。レアアースのほとんどは、世界に偏在していますが、質量の重い中重希土(イットリウムやランタニド系のプロメチウムからルテチウム)は中国以外では生産されてません。また、多くのレアアースは放射能物質を含むことが多く、それを取り除くのに手間とコストがかかります。ちなみに、中国のレアアースは、放射能物質を含まない、極めて稀なレアアースなのです。
中国の日本向け希土類の輸出が停止になって以降、各メディアでレアアース、希土類の文字を見ない日がない状況です。最近ではレアアース生産拡大計画が降って沸いたようにでてきています。そもそも鉱山開発はかなりの時間がかかるものです。新鉱山が生産開始ということは少なくとも数年前までに探査が終了し、商業化できるかの調査(FS[フィージビリティ・スタディー]など)を終えてなければなりません。
つまり、新聞等に掲載される以前からこれらプロジェクトが進んでいたのです。これら記事の内容は、今回の輸出停止により表面化しただけに過ぎません。何事も決断が遅いといわれるわが国ですが、中国依存が高すぎるレアアースに対し、既に危機感を抱き対策(探鉱調査など)をとっていたのです。例えば、トヨタ自動車(7203)が全車種ハイブリッドと公表した背景の一つに、レアアース確保のメドが立ったことがあるでしょう。トヨタ系の豊田通商(8015)や双日(2768)が開発を進めているベトナムの鉱山は、中国南部の地層と類似しているため、ディスプロシウム(希土類磁石の耐熱性を向上させる)など中重希土の生産が期待されています。この鉱山はJOGMEC(独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構)が探鉱調査をしていたところです。
このほか、アメリカのレアアース鉱山であるマウンテン・パスの再稼動は数年前から進められていましたが、未だ生産に至っておらず、遅れています。オーストラリアの鉱山も放射能除去の問題を抱えており、さらに、最終処理は中国で行うなどの話もあります。インドのレアアースは、自国で使用する原子力の燃料の副産物として分離しているため、生産量が限られているようです。カザフスタンやモンゴル、カナダなどは資源が確認されているだけで、FS等は行われているという話をいまだ耳にしません。さらに、カザフスタンとモンゴルは同国の資源戦略に伴い鉱山法による締め付けが考えられ、手放しで喜べません。
ロシアのレアアース鉱山は北洋艦隊の基地に隣接しているため、開発が思うように進んでいなようです。なお、エストニアとフランスの情報が少なく把握できていません。ちなみに、わが国の四国でレアアースの存在が確認されていますが、残念ながら析出技術が確立されていません。
このように、中国以外で生産拡大が期待されるレアアースですが、実は開発が進む希土類鉱山のほとんどが軽希土類(ランタニド系のセリウム~ネオジウム)やイットリウムが中心なのです。中重希土の生産はベトナム以外では期待薄なのです。この中重希土の中には、発光体(緑色)などで使われるテルビウムや、同じく発光体(赤色)などで使われるユウロビウム、希土類磁石の耐熱性を向上させるディスプロシウム、超電導に使用されるガドリウムなどが含まれています。
また、足元で希土類価格が急騰していますが、長期化が否めず、関係各社の収益悪化要因になるでしょう。ここで、各社の収益面への影響を具体的に開示できないのは、各社が使用しているレアアースが主要原料ではなく、添加剤であることやその分量が製品の品質を大きく左右するため企業秘密になっていることが理由です。なお、数カ月程度であれば、各社が在庫を保有しているため、収益面への影響は小さいといえるでしょう。
次頁の図表は、HEV(ハイブリッドカー)用の希土類磁石にける主原料のコスト面への影響(在庫を無視)を示したものです。プリウスが登場した97年を100として示しています。高価な添加剤であるディスプロシウムの使用量は年々減少していますが、学会やフォーラム、セミナーなどで発表された値をその都度使用して算出しています。つまり、添加剤の使用量削減を進めても、レアアース価格の上昇が大きく、全体的にはコスト削減どころか、コストアップ要因になっているのがわかります。
レアアース生産拡大で全て問題(価格面と数量面)が解決できるというわけではないのです。代替が厳しいレアアース、最終的には、わが国が得意とする技術力でもって対応せざるを得ないのかもしれません。このため、時間がかかるものと考えておいたほうが良いでしょう。なお、リサイクルできる元素は限られており、残念ながらわが国にはレアアースのリサイクル技術が完全に確立されていない状況です。
(図表)HEV用希土類磁石のコストについて(97年=100、ドル/キログラム)

HEV用 希土類磁石コスト100930.jpg

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