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TIWマガジン「投資の眼」

おしえてアナリスト

原発事業と電力会社について

Q 質問

福島原発問題を受けて、原発事業を切り離した上で東京電力の再生という話題が上がっています。となると他の電力会社の原発事業も...という類推が働きます。仮に全ての電力会社から原発事業を切り離すとなった場合、電力各社の評価はそれぞれどのようになると想定されますか?

A 答え

東京電力に関しては、国有化とは行かないまでも今後の賠償金を考慮すれば、政府管理下に置かれることは間違いないと思われます。その場合の株主責任がどの程度なのかは何とも言えませんが、投機的な動きが続くものと思われます。
前提条件がかなり複雑になるので詳細な分析は出来ませんが、東京電力は別にして、他の電力会社に関しては、直感的に言えば現在の株価(3/30時点)を大きく下回ることはないと思います。
今回の事故を契機に日本の電力行政の在り方を再検討する機会になるかもしれません。蓄電池とスマートグリッドの本格普及を目指すのであれば、地域独占で発電と送電を一体化させたビジネスモデルが適しているのかどうかも検討課題になるかもしれません。
個人的には、米国のように送電を行う地域会社と、発電を行う会社に分離し、発電会社には重電メーカーなどが新規参入できるようなビジネスモデルが求められるような気がします。
原発事業だけを別会社に集約させるというアイディアも当然検討対象になるかもしれません。原子炉を17基保有する東京電力、11基保有する関西電力を除けば、北海道(2)、東北(2)、中部(5)、中国(2)、四国(3)、九州(5)とその運用数は限られており、集約させる方が運用ノウハウも含めて効率化できるようにも思えます。
その場合、原子力発電設備の売却額は、原子力発電設備の将来キャッシュフローから廃棄に関わるコストを差し引いた金額になると考えられます。廃棄金額は「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」によって事業者は毎年積み立てを行っており、今回の事故を契機に積み立て金額の上昇による不足金が発生したとしても、売却額が簿価を大きく下回ってマイナスになるとは考え難いと思います。
直感的に現在の株価を大きく下回ることは無いと申し上げたのは、電力会社(東電を除く)のPBRが0.8~0.95倍程度に位置しているからです。
しかし、他方で中長期的に高いパフォーマンスを上げられるかについては疑問を感じます。
公的事業で有ることから収益性は低く、世界的に原発放棄の動きが広がれば原燃料価格の上昇が見込まれるだけに(消費者に価格転嫁しない限り)収益性が高まることも期待できないと思います。さらに、日本の財政悪化から中長期的に金利上昇が生じるリスクを考慮した場合に配当利回りからも魅力を感じません。
これまで電力株は安定配当から長期の投資対象と目されてきましたが、機関投資家においても説明責任の増大から、価値観(概念)の変化が生じてくる可能性があるだけにあまりお奨めできないと考えます。
以上、大変雑駁な説明で恐縮です。

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