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アナリストコラム

地熱エネルギーに注目 -溝上 泰吏-

2011年07月15日

これまで、原子力発電は安価に大量の電力を供給でき、二酸化炭素の排出がほとんど無いなど、非常に有効なものであった。
福島の原発事故以来、放射線問題などから原発に対する拒絶反応がでてきている。日本政府もようやく再生エネルギーに本腰を入れ始めているが、太陽光発電や風力発電では発電量が不安定な上に、発電効率が悪く不安定なため、原子力発電の代替としては現状では不十分であろう。

そこで、注目したいのが地熱エネルギーである。火山大国であるわが国の地熱エネルギーの潜在資源量は、世界第3位である。この資源を有効に活用しない手はないと思う。

ただ問題は、その資源の多くが国立公園や国定公園内に位置していることで、民間企業では開発が難しいことである。
しかし、この問題の解決はそう難しいものではないと思われる。日本政府が開発許可を出せは済むためである。既存の地熱発電は、マグマで温められた地下水が地上に吹きだしてきた水蒸気を使って発電タービンを回すシステムである。地熱発電は、既に東北地方や九州地方などで実用化されており、最大55MW/基の発電を行っている。
なお、一部の温泉街では、温泉の枯渇懸念が問題になっているが、そうした地域では、温度差発電が考えられる。既に工場などでは、廃熱を利用した温度差発電の使用実績がある。仮に温度差が小さい場合でも、沸点の低いアンモニアを用いることで沸騰温度を調節することができ、発電タービンを回すのに必要な蒸気を得ることが出来るようだ。
また、これらを組み合わせることで発電効率が更に向上するものと思われる。
地熱発電はライフサイクルアセスメントの観点から見ても二酸化炭素の排出量が15グラム/kWhと、少ないといわれる原発の29グラム/kWhよりも少ない発電設備である。ちなみに、太陽光発電は53グラム/kWhもある。これは、太陽光発電の作る際、素材の製造工程で発生する二酸化炭素の排出量が多いためである。

ちなみに、世界最大の地熱発電所の発電量能力は富士電機(6504)がニュージーランドの電力会社に納入し、今年5月から稼動を開始した140MW/基(原発の発電量力は1,000?1,300MW程度/基)のものである。地熱発電の発電量は太陽光発電より100倍以上大きく、更に安定した電力が得られるのが最大の特徴であろう。
こうしたことから、わが国の電力問題における、対策として地熱発電所の役割は大きいものといえよう。今後の動向に注目したい。

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