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アナリストコラム

2011年、資源国通貨である豪ドルに注目 -陳 晁熙-

2010年12月17日

2010年は中国経済が注目された年であり、2011年も同国経済の成長が世界経済に大きな影響を及ぼすとして引き続き注目されよう。先週末に中国の11月CPIが発表された。前年比5.1%と高く、その他、PPI、小売り、鉱工業生産、固定資産投資なども強い数字となった。既に10日に預金準備率を0.5%引き上げて19%としたが、さらに先週末の中央経済工作会議では、インフレへの懸念が拡大する状況で、これまでの金融緩和策を改め出口政策に向かう一方、積極的な財政政策は継続し、安定した経済成長を目指す方針が打ち出された。雇用を創出し社会の安定を保つためには年8%程度の高い経済成長が必要だとしており、金融政策を転換する一方で積極財政は続ける。金融引き締めにより同国の株式相場が下落すれば当然ながら世界の株式相場や為替相場、商品相場にも影響が出てくるか、その期間は短期間で終了しよう。年10%近い成長率の中国にとっては、ある程度の金利上昇容認は驚くべき政策ではなく、暫くすれば影響は解消されよう。
さて、中国と経済的結び付きの強い豪ドルは、年初は昨年来の連続利上げの地合いで上昇したが、資源税増税、ラッド首相辞任、政局不安、6月は利上げが一旦休止、ギリシアショックで伸び悩んでいたが、その後はギリシア情勢の安定、資源価格の上昇などで再び反発に転じ、対米ドルではパリティ(1豪ドル=1米ドル)を越えた。円に対しても4月に88円をつけてから71円まで下落していたが、資源価格上昇、インフレ懸念、雇用統計が再び改善したことで12月には年初オープンの83円48銭を越えた。さて11月は政策金利を4.75%に引き上げた後、10月雇用統計の悪化で豪ドルが売られたが、12月は政策金利を据え置いた後の11月雇用統計が強いものとなり再びパリティを越えて、先高期待が強い相場展開となっている。11月に発表された経済指標は、雇用の他に小売売上高や住宅建設許可も悪化したが、11月NAB企業景況感指数も前月の2から、今回は4となり上向いている。アイルランド債務問題もIMFとEU、英国の支援決定でユーロドル相場も下げ止まりつつあり、リスク回避姿勢が弱まり、高金利で資源国通貨である豪ドルも連れ高となっている。資源価格の上昇も豪ドルをサポートしている。世界全体的には景気回復でインフレ懸念も芽生え始めたので、緩やかな成長と資源を保有する豪は有利な立場にある。本邦の冬のボーナスを見込んだ外貨投信などの募集により豪ドル買いも増えるだろう。  
豪州同様に南アフリカも中国との経済的結び付きが強く、高金利・資源国通貨の南アランドも上昇基調で推移している。国内要因では11月自動車販売(前年比)+29.6%、11月カギソPMI52.9(予想50.7)と強かった。11月小売は前年比+6.1%と順調に伸びている。資源価格では金銀に加え、工業資源の白金、パラジウムも急騰した。年初来で見ると、金26%、銀693%、パラジウム82%、白金14%上昇している。背景にはユーロ危機の一服と米国の量的緩和で投資資金が資源国へ流入していることが考えられる。今年の成長見通しは2.8%、2011年は3.0%の成長、インフレは2011年は4.0%へ上昇する見通しであるが、IMFは今年は同じで来年は3.5%成長としている。世界全体で景気回復の動きが強まり資源価格が押し上げられているため南アランドも底堅く推移しよう。ただ、同国の高い失業率(25%)はアキレス腱だ。以前、雇用プロジェクトが打ち上げられていたが効果はなかった。パテル経済開発相は11月23日、雇用の創出と格差是正の政策「新成長戦略の枠組み」を発表し、2020年までに500万人の雇用創出を目標に掲げたが、実現には遠く、同国の足かせとなりそうだ。

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 エース交易株式会社
 シニアアナリスト
 陳 晁熙(ちん ちょうき)
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