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アナリストコラム

2011年、穀物相場はレンジを切り上げる展開へ -陳 晁熙-

2011年01月14日

1月12日にUSDA(米農務省)は1月需給報告を発表した。2010/11年度の米トウモロコシ期末在庫見通しを7億4500万ブッシェルと、前月の8億3200万ブッシェルから下方修正した。これは市場予想平均の7億7900万ブッシェルを下回る水準となった。在庫率は前月予想の6.2%から5.5%へと低下し、需給逼迫感がさらに強まった。また、同年度の米大豆期末在庫見通しも1億4000万ブッシェルと、前月の1億6500万ブッシェルから下方修正された。これも市場予想平均の1億5600万ブッシェルを下回り、在庫率は前月予想の4.9%から4.2%へと低下している。

四半期在庫(2010年12月1日現在)も大幅に低下している。トウモロコシが前年同時点比8%減の100億3987万7000ブッシェル、大豆が3%減の22億7686万ブッシェルとなり、いずれも市場予想を下回った。米国産穀物の大幅減産を受けて世界の穀物市場でも供給余力が低下している。

USDAが同日発表した2010/11年度の世界全体のトウモロコシ生産高は8億1601万トンと予想され、前月から470万トン下方修正された。米国とアルゼンチンの引き下げが主な背景。特にアルゼンチンでは、昨年12月下旬から今年1月初めの受粉期に続いた乾燥の影響で、主要産地のイールド(1エーカー当たりの収量)低下見通しが強まった。同年度の世界全体の大豆生産高も2億5553万トンと予想され、前月から225万トン下方修正した。やはり米国とアルゼンチンの引き下げが主な要因。

予想以上の下方修正を受けてシカゴ市場のコーン(3月限)は24.0セント高の631.0セント、大豆は(3月限)58.0セント高の1415.0セントとそれぞれ急騰して引けた。これから端境期に向けて一段高が予想され、コーンの700セント、大豆の1500セントはすでに射程圏内に入っているだろう。オーストラリアの洪水被害は小麦相場をサポートし、アルゼンチンの乾燥気候がコーン、大豆を押し上げた。今後はブラジルの洪水が強材料になりそうで、特に大豆に影響してくる事が予想される。ブラジル南東部リオデジャネイロ州で起きた豪雨に伴う洪水や地滑りで、13日までに死者は497人に達し、同国の自然災害による被害としては、過去最大規模の惨事になるという。ブラジル要因が拡大すれば、穀物相場はさらに高値を目指す可能性もあり、どの価格でレーショニング(価格高騰による需要減退)が起きるかが焦点となる可能性も想定されるだろう。

また、米国景気の回復、新興国の経済成長を受けて原油価格が90ドル台に浮上しているが、これは代替エネルギーとしてのエタノール需要の増加につながる。USDAは今回、前月の48億ブッシェルから49億ブッシェルへと1億ブッシェルの上方修正をしたが、原油価格が今後、95ドルを超えることを想定すれば、今後の需給報告ではさらに上方修正され、コーンの需給がさらにタイトになる可能性が出てくる。

昨年の相次ぐ中国の利上げは高騰する食料品価格に対処するという一面があった。同国産地の水不足は旱魃を引き起こし、今後は大豆に続いていつコーンの輸入国になるかに関心が移っている。今年は同国のコーン輸入量に注意したい。
なお日本の市場では上場されていないため、小麦については言及しなかったが、昨年のロシアの旱魃による禁輸措置、豪州の洪水被害による減産をうけて、やはり需給は引き締まっている。インド政府は13日、食品価格高騰を抑制するため、小麦製品の輸出禁止の検討に入ったと報じられた。2011年は穀物価格のレンジが切り上がる年になりそうだ。

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エース交易株式会社
シニアアナリスト
陳 晁熙(ちん ちょうき)
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