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アナリストコラム

素材関連業界から見た「二番底論議」、3つのポイント -佐藤 謙三-

2009年12月04日

日経平均株価は、10/3期上期の業績発表が始まった時期に当たる10月26日の10,397円から、11月末にかけて一時13%ほど下落した(足元は急速に回復)。景気の二番底があるのかどうか、どの程度なのかというような論議が活発になってきたのもこの時期。株価に織り込まれていたといえばそれまでだが、上期の業績が計画を大きく上回った素材メーカーの株価も冴えない動きとなっている。上期業績が期初計画を上回った企業も、下期、特に10/3期4Q(10年1-3月)以降に不透明感が強まっていると口を揃える。短期的には息切れする局面もリスクとして織り込まざるを得なくなり、それが現実化したのが今回の株価調整の背景であり、円高がその下げを加速させたというのが実感だ。
二番底が懸念されるとは言いながら、上期業績が上振れた各企業(担当の素材メーカー)に、悪化している明らかな兆しがあるのかといえば、意外にこれといったものが見当たらない。決算説明会で某社がコメントしていたように、「マクロ面などを分析すると、いろいろなギャップが存在したままでスムーズに回復するのだろうかという不安があり、不透明感が強くなった」というのが実感に近いような気がする。担当している素材メーカーに限ってではあるが、どのようなことが懸念されているのかを考えてみる。

いろいろ探ってみると、業界や各企業によって異なるものの、懸念されているのは大きく次の3つに絞られるように思う。㈰新興国と先進国との景気回復のギャップ。中国依存度が高くなってきたことに対する不安。㈪エコ減税等の政策の後押しのあった業界と、それ以外の業界とのギャップ。波及効果があまり見られない。㈫資源価格や金属価格の高騰とモノの動きとのギャップ。実物経済とマネー経済(投資ファンド等)とのギャップ。

例えば㈰では、先日発表された本年9月の世界の鉄鋼生産数量を見ると、全体ではほぼ前年同月比並みの水準に戻っている。しかし国別で見ると、中国の鉄鋼生産が前年同月比約3割増と大幅な増加になっているのに対して、日・米・欧の生産はまだ前年同月比2割程度の減少となっている。中国が世界の鉄鋼の需要も生産も半分近くを占めるようになっており、しかも、最近の急激な生産増で、わが国の年間総生産を上回る1億トン以上の需給ギャップがあるといわれている。やや中国の鋼材価格が軟調となっているが、まだ足元では、日本からの中国向け鋼材輸出が減少しているとか、中国が余剰の鉄鋼をわが国に向けて大幅に輸出を増大しているという兆しはない。

例えば㈪では、わが国の政策が企業業績の明暗を分けている。エコ減税効果により、家電や自動車等の一部は恩恵を受けて回復しているが、一方、新政権による公共投資抑制策がデメリットとなる建設関連や住宅関連の低迷という二極化が起こっている。セメントの需要減も大きいが、同じ鉄鋼メーカーでも、中国や韓国向けに輸出を拡大して内需の落ち込みをカバーしている高炉メーカーと、建設向け鋼材のウエイトが大きい電炉メーカーで明暗を分けている。

例えば㈫では、特に非鉄金属メーカーが価格と数量とのギャップに戸惑っている。昨年末以降の非鉄金属価格高騰のキッカケとなったのは、中国による旺盛な銅などの需要増であったことは疑いがない。ただ、価格が高騰しているほどはモノが動いていないという感触が強く、08年の前半までのような力強さはないと考えており、銅価格等の反落を警戒する見方は多い。しかし、まだその高値圏を維持している。

高炉メーカーを中心とした素材関連業界で何が問題となっているかについて、いろいろな図表を提示しながら、12月7日の19時半より直伝チャンネルのネットセミナーでお話をします。是非ご参加下さい。
結論としては、中国の旧正月(2月中旬)明け辺りまでの短期的な調整(株価ではなく鋼材等の需要)があるかもしれないが、中長期的に新興国を中心にして鋼材等の需要が増大する基本シナリオは変わらないと考えます。

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