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アナリストコラム

『ドラゴンクエスト9』 300万本突破 -鈴木崇生-

2009年07月17日

ドラゴンクエスト9が7月11日に発売された。発売後3日で300万本を突破するなどで出だしは上々と言える。前作のドラゴンクエスト8も発売後3日で300万本を突破しており、400万本突破へ期待がかかる(TIW予想は420万本)。延期が発表された際、スクウェア・エニックス・ホールディングスは同作品の出荷本数について計画に300万本織り込んでいた、と語っていた。仮に10/3期の会社計画にも同様の数値が織り込まれていたのであれば、目標は既に達成したことになる。

ただし、業績の上方修正は期待し難い。何故ならば同社の和田社長の意向は期初に約束した数値を守ることにあり、上方修正も下方修正も、「それは市場を見誤ったという経営陣の失敗」というのが哲学だからである。

和田社長は上記の信念の元に、期末時点での業績を非常に気にしている。逆に四半期の業績については重視していない。そこに捉われて何の意味があるのか、という訳だ。

ところが、その和田社長自ら、09/3期本決算説明会場で「10/3期1Qの業績は(ゲームソフトの投入がほとんどないため)相当に悪いだろう」と発言しており、それは結構な衝撃であった。そして、例年開催されない1Qの決算説明会が、
今期は8月7日に行われる予定だ。

理由は定かではないが、背景の1つとしてゲーム市場の縮小があると考える。これを気にしてか、同じく例年は開催されない任天堂の決算説明会も、7月31日に行われる予定だ。

調査会社であるエンターブレインの調べによれば2009年上半期のゲーム市場は前年同期比24%減となった。ゲーム機普及の一巡、有力タイトルの不足が理由である。一方、ゲーム市場に関しては海外の拡大が伝えられている。しかし、調査会社であるNPDの調べによれば最大の市場である北米も5月は23%減、1月から5月までの通算でも7%の減と頭打ち状態である。米国では任天堂とそれ以外とを分けた場合に、既に任天堂以外の市場は縮小へ転じており任天堂がカバーすることで市場は持ちこたえていた感があった。この5月の結果は任天堂の市場も頭打ちとなり米国のゲーム市場は縮小へ転じたことを示すと考えられる。

国内のゲームソフト各社のうち、海外の販売本数比率が高いカプコンですら地域別の業績を見ると営業利益の過半を稼ぎ出しているのは日本だ。端的に言ってしまえば、日本では駄目、米国でも駄目となってきてしまっており、八方塞である。日経平均が上昇した4月末時点からゲームソフト各社の株価を見た場合に、株価が総じて出遅れほとんど上昇していないのはこの点を背景としているためだろう。

各社はゲームソフトとして開発してきた知的財産権を有する。これを如何に多面展開し、収益を稼ぐかは1つの鍵となるだろう。しかし、玩具にしろ、アミューズメント施設にしろ、パチンコ・パチスロにしろ、市場は縮小している。
如何に成長を成し遂げていくつもりなのか、それを説明するためにスクウェア・エニックス・ホールディングスは説明会を開催するのだろう。

今期に発売される大型タイトルの先手として注目されたドラゴンクエスト9の販売本数が好調な滑り出しを見せたので安堵はできた。しかし、先行きは非常に暗いままである。

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