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アナリストコラム

KAITEKI化学 -高橋 俊郎-

2011年01月21日

昨夏、私は「日本の化学企業は中長期にどのような方向性を志向するべきか」を漠然と考えていた。当時、ネットで元サムスン電子常務の吉川良三氏「サムスン電子の躍進に学ぶ、グローバル市場を見据えたものづくり」のインタビューを読んだ(http://www.globis.jp/1393-1)。韓国企業の考え方や日本企業の問題点などを指摘する内容で強い印象が残っている。

化学セクターに関しては総花的になるが、現時点で私は、(1)海外展開を積極的に推進する必要がある、(2)韓国・中国が追い上げている半導体部材、液晶部材の多くは長期的にはネガティブである、(3)欧米企業との競争が続く医療関連とその周辺に関しては事業の拡大基調が持続するだろう、という考えである。私の出身地でもこの数年で中堅素材メーカーの工場が2拠点閉鎖された。日本国内はマザー工場(生産に加え、研究開発拠点や生産技術向上を目的とする工場)化が進み、消費者立地での製造のため海外進出が必要との流れは止められないだろう。

長期的にみると化学セクターは漠然としたネガティブな印象が大勢を占めていると感じる。主な理由は韓国、そして中国やインド企業のさらなる台頭である。しかし、短期的にはアジア市場の汎用品需要の増大は2?3年前の予想よりもはるかに強い。私は、ナイロンやゴム、アクリル関連の原料がこれほどまでに強含みをする可能性を予想できなかった。アジアの経済成長により、中東や中国での新増設分を吸収する可能性があり(化学メーカーのIRの方々は以前からそう発言していた方が多いと感じる)、日本企業も過度に悲観的になる必要が薄らいできた。
また、現在TOP3までの企業が優位性を持続する可能性もあると予想する。汎用品の設備新設は少なくとも500億円超となることが多い。装置産業であり薄利多売品であるため、投資には慎重にならざるを得ない。加えて、効率のよい生産技術を得るために日本企業との提携が必要となる場面も多くなるだろう。汎用品生産は合弁で行い、誘導体や付加価値品の競争が激しくなる可能性も予想される。その場合、多くの企業が注力する付加価値品はどのような方向性がよいのか?
そのような状況を想定した場合に共感するのは、三菱ケミカルホールディングスの小林社長が提唱している「KAITEKI化学」である。

同社は、中期経営計画「APTSIS(アプトシス)10」から新中期経営計画「APTSIS15」まで、「Sustainability(環境・資源)、Health(健康)、Comfort(快適)を企業活動の判断基準とし、持続的に発展する」とのビジョンに基づき経営計画を定めていた。その方向性を示した書籍として、小林社長は『KAITEKI化学』を出版。これまで何度か事業説明会や講演会などで概要は聞いているが、改めて読むと化学産業の将来は楽しそうだ、と感じる。

具体的内容については実際に読んでいただきたい。上述の吉川氏のインタビューは、ものづくり産業を見つめるため、『KAITEKI化学』は今後の化学産業の方向性を考えるうえで参考になる。ただ『KAITEKI化学』を読まなくても、今後は新聞や雑誌などで「低炭素」と書かれている場合には「新・炭素」と読み替えていただきたい。                       

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