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アナリストコラム

情報システム各社(NTTデータ、NRI等)の株価予測 -鈴木 崇生-

2010年09月17日

設備投資の持ち直しが明らかとなりつつある。今月上旬に発表された4-6月の法人企業統計を見るとソフトウェアを含む設備投資は前年同期比-1.7%となっている。2桁の減が続いていたが、4-6月期にその幅を急速に縮小させた。

TIWでは法人企業統計から、「金融業、保険業以外」の経常利益の半額と減価償却費を合わせた金額を簡易的なキャッシュ・フローとして算出し、設備投資との相関を捉えている。この簡易的なキャッシュ・フローは設備投資の先行指標として考えられ、既に2010年1-3月に上向いていた。

小職の見ている情報システム各社周りの状況を見ると、既にサーバーなどのITプロダクトや、パッケージなど需要(受注)回復に際して足回りの早い分野は回復傾向が見られている。要件定義など時間がかかることから遅行するシステム開発も今後受注の増加として反映されるだろう。
各社へのヒアリングからは、受注高へ数字としては反映されていないものの、案件ベースでは走り出していること、現場の雰囲気は明らかに昨年より良化していること、などが聞かれた。この下期より業績は回復、拡大傾向に入ると予想される。

情報システム各社の株価は、業績回復の期待感が高まると日経平均を超えたパフォーマンスが見られている。情報システム各社の平均パフォーマンスを株式会社ユーザーベースのSPEEDAから取ると、年度をまたぐ近辺でのパフォーマンスが高い。日銀短観で設備投資へのDIが改善傾向を示したことから期待相場が形成されたものと考えられる。

ただし、複数の観点から楽観視はし難い状況となり、それが1Q決算後に足元で見られるパフォーマンスの悪化へつながっていると考えられよう。ここでは3点指摘しておきたい。

1つはセクター内での基幹銘柄で1Qに不採算案件が発生したため、これらの銘柄に各利益の下押し懸念が生じたことだ。情報システム各社は基本的に内需産業であり、GDP以上の成長性を付与することは難しく、従って株式市場においても平均以上のパフォーマンスを期待し難い。M&Aによるグローバル化が見込めるNTTデータ、時価総額の高いNRIがセクターの基軸となり国内外の機関投資家の売買をまず誘い全体へ波及すると考えられるが、両社ともに不採算案件により各利益が通期の会社計画に対して弱い出足となった。

次に投資マインドの悪化懸念が挙げられる。6月に先行指数、一致指数、遅行指数ともにDIは目安である50を割り込んだ。時期的には円高が急速に進行した時期と重なる。法人企業統計で見られる設備投資の持ち直しについて減少幅の寄与を取ると製造業の縮小幅が高く、製造業の設備投資動向が非製造業に比べて注目される状況にある。また、足元で利益率の改善をもたらしている要因を分解すると人件費の圧縮や減価償却費の負担減によるところが大きく、グローバル化対応などのシステム開発が必要といわれながらも、減価償却負担の増加を嫌気する可能性を指摘できると考える。

最後に製造業は生産拠点を海外へシフトさせ、国内の設備投資は底這いにとどまり増加しないという可能性をあげることができるだろう。経済産業省の海外事業活動基本調査を見ると製造業は海外の現地法人を増加させていること、販売先割合は現地販売比率が高まっていること、現地での部材調達や加工割合も高まっていることが読み取れ、生産拠点の海外シフトが進んでいると言い得る。従って、何かしらの国内投資への喚起策が行われなければ情報システム各社の業績へ波及しない可能性があるといえるだろう。

NTTデータ、NRIの不採算案件の動向、NRIにおいては主要顧客である野村ホールディングス向けの売上に回復が見られるかが、各社の短期的な株価の反騰の鍵を握ると考える。マクロ的な指標に弱さが見られなければ2011年度の業績拡大期を見据えて株価の上昇は持続的なものになるとTIWでは期待している。

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