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アナリストコラム

デフレ経済でも成長する企業 -坪井信行-

2009年03月13日

日本経済は、つかの間のデフレ脱却を経て、再びデフレ傾向に陥りつつある。第二次大戦後、先進国で深刻なデフレを長期間経験したのは、日本だけだろう。その過程において、我々は多くのことを学んできた。実際、デフレ環境下でも、成長を続ける企業も少なからず存在している。

デフレに強い企業には二つの類型がある。一つは、当たり前の話だが、低価格化に対応する能力が優れた企業だ。
街を歩けば、そうした元気な企業の姿が目に入ってくる。ファーストリテイリング、マクドナルドに代表されるような企業群である。これらの元気な企業の特徴は、低価格にも関わらず、顧客の求める「価値」を提供していうことだろう。常に新しいプロダクト(価値)を提案し、アピールし続けている。こうした企業には、経営者の強力なリーダーシップ(経営力)を感じる。

もう一つは、コスト構造が柔軟な企業である。
必ずしも低価格品を売っている企業だけではない。デフレとなれば、高額品でも価格低下は避けられない。そうなったときに、柔軟に対応できるコスト構造が強みとなる。コストには、大別して固定費と変動費があるが、その比率がポイントだ。一般的には、変動費の比率が高い企業の方が柔軟性は高い。事業環境が似通っているはずの同業者でも、コスト構造の違いが優劣を決する鍵となる。
日本では、過去10数年、製造業を始め全産業的にコスト構造の大変革が進行してきた。多くの批判を浴びているが、日本で非正規雇用が急速に広がったのは、各企業のデフレ対応策が原因であることは否定できない。従来は固定費だと考えられていた人件費の一部を、非正規雇用の拡大によって変動費化したということだ。そうしなければ、生き残れなかったという現実がある。営利企業である以上、そうした厳しい現実と向かい合わなくてはならない。売上高が減少していくのに、手をこまねいているのは、企業としては許されないことである。

少々脱線気味だが、非正規雇用の問題を解決するには、正規雇用者の賃下げや解雇に関する制約を従来よりも緩めるしかないと私は考えている。日本では正規雇用者の権利は、過度に保護されている面がある。非正規雇用者だけが、制度上簡単に解雇できる対象になっていることこそが、問題の本質であろう。
労働者の権利保護が大事だということに異論はないが、企業活動の活力を大きく損なってしまったら、長期的に立ち行かなくなることは見えている。ただ、この話の前提には、有効なセーフティネットと十分な流動性のある雇用市場が整備されることが不可欠であることも、蛇足ながら付け加えたい。今我々に求められているのは、現実を見据え、一歩前に進むことである。決して後戻りはできない。
大局観を持って行動し、日本を元気にしよう!

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