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アナリストコラム

昨年末に突如、損保再々編観測が浮上 -堀部吉胤-

2009年01月09日

年の瀬も押し迫った12月28日の日曜日にNHKは、三井住友海上グループホールディングス(損保業界2位)、あいおい損保(4位、トヨタ自動車の関連会社)、ニッセイ同和損保(6位、日本生命の関連会社)の3社が統合に向け最終調整に入ったと報じた。誰がリークしたのかわからないが、NHKにしては珍しいスクープといえよう。その後、各メディアも一斉に3社統合を報じた。現時点では3社とも決定した事実はないとしているが、報道の信憑性は高いとみられる。3社合算の正味収入保険料は08/3期連結ベースで約2.7兆円となり、東京海上グループホールディングスを約5,000億円引き離し、国内損保トップとなる。

損保業界は1998年の保険料率自由化を契機に2001?2002年にかけ再編が一気に進んだ。それまで13社あった上場損保は、現在では7社になっている。何故、この時期に再々編なのか? 当然、3社からは何のコメントもないため、何が3社を突き動かしたか明らかではない。考えられることとして、(1)2005年に発覚した保険金の支払い漏れ・不払い問題対応が一巡し、動きがとりやすくなった、(2)自動車販売の急激な落込みなど国内景気の急速な悪化による先行き不透明感、(3)三井住友海上の国内損保トップへの野望、(4)海外展開力や規模で劣るあいおい、ニッセイ同和はジリ貧の恐れがあった、ことなどがあげられよう。損保は基本的に規模の経済が働きやすい業種であり、合併による規模拡大には相応の意味がある。ただし、報道によると力の均衡をとるため、あいおいとニッセイ同和が先行合併し、その後、持株会社の下に三井住友海上とこの合併会社を並列で置く形で2010年春の統合を目指すとされており、スピード感に欠ける。最終的に損保3社が合併しないと合理化を進めるのは難しいだろうから、統合効果が出るまでには相当な時間が必要だろう。

それでは何故、この3社なのか? 三井住友海上とあいおいは、トヨタと親密であり、三井住友海上が持株会社に移行した当時から統合の噂が絶えなかった。あいおいとニッセイ同和も合併が噂されていたが、この両社だけの合併では、規模が多少大きくなるだけで機能面での向上が見込めず余り意味がない。結局あいおいが仲介する格好で3社統合という話になったのかもしれない。3社統合に支障はないのか? トヨタが反対する理由はないだろうが、日本生命の考えがみえない。損保事業には関心がなくなったのだろうか?

これで損保業界の再編が加速するというのが、一般的なマスコミの論調だ。しかし、加速も何も残された会社で買収対象になる目ぼしい会社は日本興亜損保しかない。朝日新聞は、日本興亜の筆頭株主で損保ジャパンの大株主でもある米投資ファンドのサウスイースタン・アセット・マネジメントが日本興亜に損保ジャパンと経営統合交渉に入るよう求めていると報じた。日本興亜はそうした事実はないと否定しているが、ありそうな話ではある。日本興亜は旧UFJ銀行と親密で銀行系列でいえば東京海上の方が近い。東京海上は国内トップへのこだわりがあるだろうが、買収には3つのメルクマール、すなわち、(1)健全性、(2)強いビジネスモデル、(3)成長性を掲げており、日本興亜は(1)しか該当しない。

損保ジャパンは日本興亜に強い関心を持っているもようで、やはりこの組合せが本命だろう。問題は日本興亜の株価がNAVからみて損保ジャパンよりもかなり割高なことだ。両社の株価が現状のままで統合を強行すれば、損保ジャパンの既存株主の利益を損なうことになり、ハードルは低くない。いずれにせよ、狭い国土に同じような商品を扱っている損保が7社も必要ないだろう。消費者のためにも、銀行のように3つのグループに集約されることが望ましいのかもしれない。

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