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アナリストコラム

REITは内部成長から外部成長の局面に -堀部吉胤-

2009年09月04日

東証REIT指数は2007年5月31日の2,612.98をピークに崩落が始まり、昨年9月のリーマンショック以降は垂直的な下落となり、昨年10月28日に704.46の最安値を付けた。リーマンショック前の下落は需給面の要素が強かったが、リーマンショック後は、㈰金融機関が不動産融資に対し及び腰になったことによるリファイナンスリスク、㈪実体経済悪化に伴い空室率、賃料が調整局面に入ったことが下落要因になったといえよう。

リファイナンスリスクは昨年10月のニューシティレジデンス投資法人の破綻により現実のものとなり、REITの借入条件は悪化した。賃貸利益が安定していても、金融費用が増加しEPS(=1口当り分配金)が低下するケースが増えたほか、借入金返済目的の物件売却による売却損計上や、フォワードコミットメント案件の取得中止による違約金がEPSを低下させるケースも散見された。

こうしたREIT市場の危機に対して、政府・日銀は矢継ぎ早に流動性を供給する政策を実施。この秋から始まる投資法人債の償還リスクに対しては、通称官民ファンドの設立によるセーフティーネットが張られた。REITの再編のための環境整備も進展。リファイナンスリスクの後退、信用補完のためのスポンサーチェンジ、再編期待などを背景に3月中旬から東証REIT指数は反転し、9月3日終値で996.37まで回復している。

リファイナンスリスクが後退する一方、8月14日に発表されたJ-REITの代表銘柄である日本ビルファンド投資法人(NBF)の09/6期決算は、上記㈪のリスクを市場に再確認させるものだった。NBFのEPS予想は、09/6期実績21,775円に対し、09/12期18,500円、10/6期16,100円。既存物件だけで何もしないと空室率低下、賃料下落の影響が予想以上に厳しいことを示した。

にもかかわらず、NBFをはじめ三菱地所系のジャパンリアルエステイト投資法人(JRE)などのオフィス系有力REITの投資口価格の下落は限定的だった。市場は内部成長のマイナスを外部成長で補うことを期待しているためと考えられる。内部成長がマイナスになる時は、物件を安く買える時であり、既存物件のNOI利回りが低下しても、NOI利回りの高い新規物件を取得すれば、ポートフォリオ全体のNOI利回りは維持できることになる。REITは2006年、2007年に借入により積極的に物件を取得したため、LTV(負債比率)が上昇。2008年以降、エクイティファイナンスがストップしたため、LTVは高止まりしたままになっており、借入により新規物件を取得するのは困難である。

従って、外部成長を図るためにはPOが必要。NBFやJREといった有力REITの投資口価格はBPSを上回っており、POでBPSが希薄化することはない。NBFとJREのインプライド・キャップレートはほぼ5%。足元はまだ私募ファンドからの物件の放出は少なく、インプライド・キャップレート以上のキャップレートで物件を取得することは難しい状況だが、CMBSが償還期を迎えることなどから今後、有利な条件で物件を取得する機会が増えるだろう。有力REITのPOは目前に迫っているといえよう。

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