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アナリストコラム

ゲームソフトの中古市場 -鈴木崇生-

2008年11月28日

ゲームソフトは年末に一番良く売れる。会社側にしてみれば、稼ぎ時である。しかし、各社のラインナップを見てみると、今年は例年と少し違う様相を感じる。据置型のゲーム機で遊ぶソフトより携帯型のゲーム機で遊ぶラインナップが多く感じられるのだ。

ゲーム機の普及台数以上にゲームソフトが売れることは限りなく有り得ないと思われるため、売れているゲーム機にゲームソフトを投入することが経営戦略は正しいといえる。しかし、普及台数だけで決まっているのだろうか。売れるゲームソフトはゲーム機の販売台数すら牽引することは過去が証明している。背景には、リスクを負えない経営判断が働いていそうだ。ゲームソフトの開発費は10年前と比べて格段に上昇した。慈善事業ではないため、当然収益を上げなければならない。その点、携帯型のゲーム機用に作るゲームソフトは費用が安く済む。

短絡的にいってしまえば、良いソフトは売れるものである。では、良いソフトを作るためにはどうすればよいかというと、第一にアイディアをあげることができるが、やはりお金が必要である。投資資金ゼロでリターンが生めるはずもない。

そのお金ということに関しては中古市場が一役、残念なことに弊害をもたらしているといえるだろう。理由は単純明快で、ユーザーが中古でゲームソフトを買ったところで、ゲームソフトを作る側へは1円も入らない。中古ショップが潤うだけである。

お金があればよいゲームソフトが作れるかというと、断じて否だ。しかし、作る側へお金が入らないと、そもそもビジネスは成り立たない。中古市場はゲームソフトを作る側にしてみれば疚しい存在であるといえる。

ところが、その中古市場もだいぶ様子が変わってきた。経営はかなり厳しいらしい。秋葉原でも、ここ数年のうちにショップの並びがかなり変化した。それとなく話を聞くと、理由は2つに絞られるようだ。1つにはアマゾンなどのCtoCを可能とするビジネスモデルの登場、もう1つには売れる中古ソフトが限られてきているということらしい。

深刻なのは2点目で、これは更に理由が2つに分かれる。1つには任天堂が開拓したユーザー層は中古市場の客とはなっていないこと、つまり仕入れは必要で費用は発生するが売上に立たず利益を圧迫する。もう1つには店頭に飾れるようなタイトルがない、要はヒット作が生まれてこない、ということらしい。なんのことはない。悪循環である。

中古市場の存在には意義があるかもしれない。廃棄物は減ることになるだろうし、なにより安価に新しい楽しみを探すことが出来る。ユーザー側にしてみればありがたい存在といえるだろう。しかし、1ゲーマーとしての視点に立った場合、ゲームで遊べているのは開発してくれる人がいるからである。ならば、ゲームソフトを買うのであれば、開発者へお金を落とさねばならないだろう。次にまた面白いソフトを作って貰いたいから尚更だ。そうすると、中古市場は別に存在しなくても良い。1ゲーマーとしても、ゲームソフト会社の収益拡大を期待する身分としても、私としては、中古市場はなくなってくれた方が有り難い。

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