メニュー
アナリストコラム

携帯電話メーカーは本格再編へ -鈴木崇生-

2009年09月18日

NEC、カシオ計算機、それに日立製作所が携帯電話端末事業を2010年4月に統合するとの発表がなされた。NECの携帯電話事業と、カシオ計算機と日立製作所の携帯電話端末を開発しているカシオ日立モバイルコミュニケーションズとが事業を統合する。発表に先んじて観測記事が出ていたために驚きは少なかったが、いよいよ再編が本格化するという印象を強く受ける情報がこの発表には含まれていた。

2010年4月に統合される合弁会社の商号は「NECカシオ モバイルコミュニケーションズ株式会社」であるという。
商号に「日立」の名前がないのである。

2010年6月までに段階を踏んで統合は行われる。最終的に役員構成は8名で6名がNEC、2名がカシオ計算機だ。出資比率はNEC70.74%、カシオ計算機20.00%、日立製作所9.2%と日立の影が完全に薄い。出資はしているが、事実上撤退した感が強い。日立製作所が行う事業の統廃合の一環と見受けられる。

報道で毎月言われていることだが、携帯電話キャリアが割賦販売を開始した影響などから国内の携帯電話出荷台数は前年同月を割る展開が続いている。これまで日本の携帯電話メーカーは携帯電話キャリアが端末を購入してくれる恩恵に支えられ、国内のシェア拡大を念頭に事業を構築すれば良かったと言っても過言ではない。その前提が崩れたため、各社とも苦境に立たされているといえる。2008年には三洋電機が京セラに携帯電話事業を売却、三菱電機も撤退を表明するなど既に再編の動きは出始めていた。

シャープ、京セラ、パナソニック、富士通、そしてNECは携帯電話事業に注力する発言が出されており、収益性の改善や海外への展開を模索している。このため、これらの企業が横に連合するとは考え難かった。また、京セラはKDDIに一定量の供給が見込めること、シャープは国内で最大の供給量を誇ることからこの2社が主導権を握れない形で事業を統合するとは今も思えない。

NECが最も出資比率が高くなるところを見ると、やはり主導権を握る形で事業を拡大することが出来る相手を模索していたということだろう。その点で、カシオ日立は良い相手といえるかもしれない。
その理由としてまずお互いの協力関係が上げられる。NECはカシオ計算機ブランドの端末をOEMで供給するなど関係は良好と見える。NECはNTTドコモなどのW-CDMA規格、カシオ日立はKDDIのCDMA2000規格へ端末の供給を注力してきており、通信技術の補完相手としても最適に映る。また、NECがNTTドコモへ供給している端末、カシオ計算機がソフトバンクモバイルへ供給している端末はMOAP(L)という携帯電話用のプラットフォームを共通して使用しているため、開発コストの削減が早い段階で期待できる点も魅力的だ。

携帯電話の出荷台数について、私は今年度の底打ちを予想しているが、今後5,000万台へ回復することは難しいと考えている。そのため、端末の高機能化が進む現状では開発コストが嵩むことは避けられず携帯電話メーカーの再編は今後も進むことになるだろう。株式市場の関心としては、市場シェアがそこまで大きくはなく、携帯電話用のプラットフォームにMOAP(S)を採用する富士通に注目が集まるのではないかと思われる。MOAP(S)はSymbian OSを搭載したプラットフォームであるが、開発が難しいという話はよく聞かれるところだ。また、Linuxベースでの開発が主流となりつつあり、再編のみならず、プラットフォーム戦略の観点からも富士通の動向には注目したいところである。

アナリストコラム一覧 TOPへ戻る