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アナリストコラム

史上最高値更新の金相場、短期的には利益確定のタイミング - 陳 晁熙-

2010年10月22日

10月13日、NY金相場はザラ場で1388.1ドルと史上最高値を更新した。金相場は年初来25%の上昇となった。FOMC(米連邦公開市場委員会)議事録要旨でFRB(米連邦準備制度理事会)による米国債買い入れ再開による追加緩和を行う用意があることを示したため、ドルが一段と下落する懸念が強まった事が強材料になった。世界的な通貨安競争(戦争というべきか)により紙幣への信頼度が低下し、投資家は一段と金への信頼を高めている。19日には、中国人民銀行(中央銀行)が2年10カ月ぶりの利上げを発表した。定期預金が0.25%引き上げられて2.50%になる。利上げを受けて中国経済が減速し、世界経済のけん引役が不在となるため金需要にも悪影響を及ぼすとの見方が強まり、金は前日比で36.1ドルと2.63%も急落し1336.00ドルに値を下げた。この日、安全資産であるドルと円が全般に買い戻されて高金利通貨は急落し、商品相場はほぼ全面安となった。

金は史上最高値を更新し、上値のメドがあるようでない。1400ドルを目前にして高値警戒感が強まるのは当然であり、中国の利上げは利益確定のきっかけになったといえる。これはドル安が続く状況で、週末のG20を控えてドル売りポジションを縮小するきっかけになったのと同じ事だろう。

米ゴールドマン・サックスは11日のリポートで、1年後の金価格予想を1650ドルと、従来予想から20%超引き上げている。英ゴールド・フィールズ・ミネラル・サービシズ(GFMS)のポール・ウォーカー最高経営責任者(CEO)は13日に都内で講演を行い、ドル建て金価格は「年内、1200ドルを割らない。向こう6カ月で考えると1400ドルを超えても意外ではない」との予想を述べた。オーストラリア・ニュージーランド(ANZ)銀行は21日のリポートで、今年10?12月期の金相場予想を1420ドル(従来予想は1325ドル)に引き上げた。2011年7?9月期には1550ドル(同1375ドル)に達するとの予測を発表した。いずれも強気の見通しだが、その背景にあるのは、米国の追加量的緩和の観測が徐々に高まってきているため実質金利の低下が続いている事、中国など新興国市場で投資需要が増加している事などがある。

さて、過去に金が天井をつけたのは1980年1月だが、この時、旧ソ連がアフガニスタンに侵攻し米ソ冷戦がピークを迎えた。経済的には原油価格が急騰し、商品相場が高騰、欧米日の先進国はインフレに見舞われていた。米国はそれを受けて連続8回の利上げを実施し、徹底してインフレを潰しにかかった。ところが現在はその逆の状態が起きている。米国は徹底して金融緩和を実施する意向。このような状態で高値警戒感があっても金相場が天井打つのはまだ先の話だろう。結論を言えば、米国が金融政策の引き締めを行うまで金相場の上昇基調は継続すると見ている。

さて、先週末、エヴァンス・シカゴ連銀総裁が「一時的に高いインフレ目標を設定することを検討すべき」と発言。ロックハート・アトランタ連銀総裁も、インフレ目標の導入を支持する発言を行なった。一連の発言は、「インフレ期待・インフレ目標」を目指しているようだ。インフレとなれば金利上昇、ドル反発と180度変わった展開も想定される。金利引き上げ時には、先の中国の利上げと同じような反応が起きるだろう。つまり、「ドル上昇、金急落」。しかし、長期的に見ればインフレを反映した上昇相場の種が蒔かれると見ている。まだ先の話になるだろうが。

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 エース交易株式会社
 シニアアナリスト
 陳 晁熙(ちん ちょうき)
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