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アナリストコラム

現政権の経済政策に関する考察  -高辻 成彦-

2011年02月18日

今回は機械セクターという枠に縛られず、現政権の経済政策について論じてみたい。このところの経済政策について、私は不安を覚えている。その理由は、経済成長の促進よりも、財政再建を優先させる動きのように見受けられるためである。

去る1月24日に「平成23年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度?新成長戦略実現に向けたステップ3へ?」が閣議決定された。これによれば、3段階の経済対策が講じられることになる。3段階とは、予備費を活用したステップ1、補正予算によるステップ2、平成23年度の予算・税制等からなるステップ3と記載されている。ステップ3では、「成長と雇用」に重点を置いた新成長戦略推進が謳われており、施策として法人実効税率引き下げが挙がっている。これ自身に対して私は特に異論はない。

マクロ経済学では理論上、減税政策よりも財政政策を実施した方が、乗数効果(経済効果)が高いという考え方がある。これはハーヴェイロードの前提、即ち政策実施者が賢人で間違いを起こさない、ということが前提条件になる。実際には無駄な財政支出が多く存在することは言うまでもないだろう。このため、むやみやたらな財政政策を行うよりも減税政策を行った方がまだ経済効果は高いと私は考えている。

しかし政策実施のための裏付けと、経済成長に向けた作業工程が現政権からはあまりよく見えて来ない。鳩山民主党政権発足後、大きな政府の考え方のもと、事業仕分けが盛んに行われた。が、先ず意見集約して作業工程を広く示すべきではなかったか。個別作業から入ったが故に総論で矛盾が生じてしまい、民主党政権の全体像が瓦解している印象を受ける。

これを是正するための切り札として、与謝野経済財政担当大臣が就任。就任後は社会保障の見直しや消費税率引き上げ論議が活発化して来ている。与謝野氏自身は以前から財政問題に高い関心を寄せていたと見られるため、想像の範囲内だが、結局のところ、法人税率引き下げ論議と消費税率引き上げ論議が同時期に議論される点において、果たして経済成長に向けて実効性のある政策が実施されるのかどうか、不安を禁じえない。成った果実をすぐに刈り取られるのでは、資金が投資や消費に回りにくいだろう。

今、早期に行うべきことは、公的部門の歳出圧縮をいかにして行うか、どうやって経済成長に繋げて行くかだろう。その上での増税実施でない限り、結局のところ国の経済的活力を奪う結果になりかねない。既に2009年3月24日、麻生政権の頃に国の「出先機関改革に係る工程表」が閣議決定されたにも関わらず、現政権の地方分権の取り組みは、実施を先送りさせられている印象を受ける。2010年12月28日に「出先機関の原則廃止に向けて」とするアクションプランが閣議決定されたが、この中で地方自治体への権限移譲がはっきり打ち出されたのは、国道・河川の一部と、ハローワークのみである。現政権におかれては、早期に歳出を圧縮するための果敢な政策実行を求めたい。

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