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アナリストコラム

完成車メーカー上期及び通期決算展望 -高田 悟-

2013年10月25日

来週火曜日の三菱自動車を皮切りに完成車メーカーの14/3期上期決算発表がスタートする。商用車を除く国内完成車メーカー8社の世界販売台数は北米が約3割、中国を含むアジアが約25%に上り、ホームグランドの日本が約2割を占める。この3地域の需要動向に加え、為替変動、主に米ドルに対する円の動きが国内完成車メーカーの期間損益に大きく影響を及ぼす基本環境だ。基本環境が動く中で、おおまかには其々の環境からの影響度合いの違い、モデルサイクルや設備投資サイクルの違いなどから個社の期間損益が決まり、会社間の差が現れる。以上を踏まえた上で完成車メーカーの上期及び通期決算を展望する。

この上期は北米の中心米国市場が堅調な住宅販売などを受け好調に推移した。4-9月の新車販売は前年同期を約9%上回った。また、当初1,500万台前半と見られていた暦年の新車販売台数は1,500万台半ばを超えそうな勢いだ。アジアは昨年踊り場を迎えた中国で1-9月累計の新車販売台数が前年を約13%上回り再び勢いを取り戻した。また、国内勢の牙城とも言える東南アジアは前年の一次取得者向け優遇策終了の反動によりタイの失速が顕著だが、タイ以外は概ね堅調に推移した。国内の上期は前年のエコカー補助金終了の反動で登録車販売台数が前年割れの一方で、各社商品力強化を進める中、三菱との合弁による日産の参入による市場の活性化もあり軽自動車販売台数は前年を上回った。

上期は販売面では国内登録車の販売悪化を海外の好調と国内軽販売の増加で補った。加えて為替は米ドルに対し前年上期の79円→98円程度へ2割以上円安が進んだ。上期は中国需要の伸びは領土問題の影響が残り享受できなかったが、中国を除く海外好調と円安効果により、各社、概ね好決算が想定される。中でも米国販売が極めて好調で円安効果も相対的に大きい富士重工業が大幅に利益を伸ばした。また、北米及び東南アジア販売や国内HV車販売が好調でダイハツ工業のアジア好調も取り込んだトヨタも大幅に業績を伸ばしたと見られる。こうした中で、米国販売好調ながら、中国領土問題の影響が大きく、リコール影響も重なった日産並びに世界販売600万台を目指し投資が嵩む局面にあり、主力小型車「フィット」投入前のホンダ業績が他に比べ見劣りする結果になろう。

後半に目を転じる。下期は上期とやや様相が異なってくると見られる。先ず国内販売が上期から上向きそうだ。補助金終了の反動が一巡し、一定の消費税引き上げ前の駆け込み需要が見込めるからだ。また、中国販売は前年下期の落ち込みが領土問題で大きかったため各社大幅な回復が見込まれる。一方で景気に翳りが見られるタイやインドなど中国を除くアジア圏の需要が懸念される。また、好調な米国販売も既にリーマンショック前の水準に戻しておりこの先伸びは鈍化しそうだ。更には米国の量的緩和縮小観測の後退で円安が大幅に進む公算が小さくなった。下期の平均レートは上期より円高水準にとどまるかもしれない。

上期は期初の控えめな見通しに対し概ね各社良好な結果となったと見られるが故に、通期計画上方修正への期待は強い。しかし、下期のこうした展望を踏まえるとおそらく、計画上方修正に踏む込む先は上期の会社想定上ぶれ分の従来通期見通しへの上積みにとどめてくる公算が大きい。こうした先の株価は業績好調を織り込み市場を上回るパフォーマンスになっており注意を要そう。一方、上期業績が相対的に低調であったと見られる日産やホンダの通期計画は期初予想が据え置かれるだろう。ただし、下期は大幅回復の見通しとなろう。日産は中国挽回が想定され、下期に国内外で新型車効果拡大が見込め、ホンダは新型「フィット」の本格寄与が想定されるためだ。これまで、この2社の株価は市場をアンダーパフォームしてきており、下期の業績回復を踏まえると株価は魅力的な水準にあると考える。さて、最後になるがマツダの一段の業績拡大が期待できる。低燃費と超円高化での採算確保を実現したスカイアクティブ技術搭載車がヒットし、今般全面搭載第3弾となる量産車「アクセラ」新型の販売がスタートした。今後、スカイアクティブ技術搭載車の比重が一層増すと見られるためだ。株価パフォーマンスはこれまで良好だが同社株の魅力は依然衰えていないと考える。

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