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アナリストコラム

異常値を示す株式リスクプレミアム -藤根靖晃-

2009年06月19日

以前にも紹介したが、2005年から簡便法による株式市場のインプライド・リスクプレミアム(=現在の株価が正しいという前提の下に算出したリスクプレミアム)を毎月末計算している。

参考までにリスクプレミアムは、次の式から求められる。
投資家の要求利回り=〔1−配当性向×(1−PBRの逆数)〕×来期予想ROE
投資家の要求利回り=安全資産利子率+リスクプレミアム
(山口勝業著:「日本経済のリスク・プレミアム」東洋経済新報社より)

しかし、昨年の10月からは異常値が続いており、あまり役には立っていない。(計測期間が2005年からと短いので確定的なことは言い難いが)経済が正常な状態では、インプライド・リスクプレミアムは5%台後半から7%台前半にある。しかし、現在(6月17日現在)は東証1部で1.49%、JASDAQで2.64%と著しく低い状態にある。

昨年10月からの企業業績の急激な悪化局面では、株価のほうが予想業績より先行的に反応していることが影響しているものと考えていた。実際、市場全体が赤字になることによって算出不能に陥った。現在でも前期基準のPERが示されていない状態になっているはご存知の通りである(新聞上では横棒〔−〕)。しかし、黒字を見込んでいる今期予想基準でもリスクプレミアムの異常値は変わらない。

マーケットではリーマンショック前の株価水準に視点が移りつつあるが、昨年前半の13,000円?14,000円という水準は、後知恵で考えれば、仮に金融危機が起こらなかったとしても割高感のある水準であった。日経平均のEPS成長率は2008年4月の段階でマイナスに陥っていたからである。

もし、現在のROE水準と配当性向で6%程度のリスクプレミアムを市場に投資家が要求するのであれば、東証1部のPBRは概算で0.9倍程度にまで押し下げられなければならない。おおよそ25%下落した株価水準である。

こうした説明をするまでもなく、多くの方々は現在のマーケットが金融相場の様相を示していることに気づいていらっしゃることだろう。それだけに単純に下落するとは言いがたい。景気回復の失速を恐れて、世界が低金利政策を強行し続けるのならば、理論値とかけ離れた上昇相場が現出されるかもしれない。

直近、内需関連を推奨しているようなストラテジストの方々も、現在のマーケットが金融緩和と財政政策による金融相場であることは分かっているだろう。また、足元はミルク補給的な景気浮揚策によってプラスの影響を受けたとしても、潜在成長力の低下した国内市場を対象としたドメスティック企業に魅力がないことも分かっている。こうしたことを承知の上で再び鳴り始めた”音楽”に手拍子を送っているのである。

理論値は現株価よりも25%下の水準だとしても、(考えようによっては)やられても25%と腹をくくれる投資家なら、”音楽”に乗ってみるのも一つの考え方かもしれない。それは個々の投資家が自らの思想やスタンスで決めればよい。ただし、その場合でもお薦めできないのはインデックス型の投資である。 

金融相場では、テーマ株や好業績企業が集中的に物色される。単純な比較割安感(絶対的な割安ではなく)で物色される銘柄は、上昇時には出遅れ、下げるときには一緒に下げる。

さて、ここでは個別銘柄については言及しないが、銘柄研究には是非、TIWレポートをご利用下さい。

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