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銀河 -Cranberry Jam-

2015年09月11日

引っ越してから、空を見上げる機会が増えました。ビルの隙間を埋めるような都心の空と比べると、郊外の空はだだっ広く感じます。夕暮れ時から過ごしやすい気候になり、星が見え始める時間帯も少しずつ早くなりました。暑い時期に比べて空気が澄んできたからか、星がよりキレイに見える気がします。

私たちが見ている星は、銀河系の内側にある星々です。つい100年ほど前までは、宇宙とは銀河系が全てでした。実は銀河系の外側にも全く別の銀河が存在していることが分かったのは、わずか90年ほど前のことです。かつて星雲と呼ばれていた雲状の物の多くは、銀河系の外側にある別の銀河でした。宇宙には少なくとも1700億個の銀河が存在すると言われています。

そしてそれらの銀河は、私たちの銀河系から遠ざかっていることが分かりました。1929年のことです。銀河が放つ光が本来の色よりも赤みがかっており、いわばドップラー効果のように波長が伸びていたのです。そして遠くにある銀河ほど早い速度で遠ざかっていることから、宇宙全体が膨張していることが分かりました。その膨張を過去へと遡ると、始まりがあったことになります。ビッグバンです。今から138億年前と推定されています。

現在観測できる銀河の中には、100億光年も離れたものもあります。光の速さでも到達に100億年かかる距離なので、100億年前に放たれた光を見ていることになります。それらの光を発した恒星たちは、現在はもう1つも存在していないはずです。遠くを見るということは、過去を見るということです。私たちが観測可能な最長距離は、130億光年です。それより先(昔)は、観測することが出来ません。なぜなら、初期の宇宙は高温すぎてプラズマ状態だったために、光を通さなかったからです。

宇宙の膨張する速度は、指数関数的に加速しています。そしてあらゆる物体は180億光年より遠く離れると、光より速い速度で私たちから遠ざかるため、そこから発せられる光を観測できなくなります。時が流れるにつれて、観測できる宇宙の範囲は相対的に狭くなっていきます。2兆年後の未来に生きる知的生命体は、自分たちの銀河系以外の銀河を観測することが出来ません。他の銀河が遠すぎて光が届かないからです。膨張の証拠になる他の銀河の存在は全て彼方に消えてしまうため、「銀河は1つしかなく膨張もしていない」という100年前の人類が描いていた宇宙像と同じような宇宙に自分たちが住んでいると結論づけることでしょう。そういう意味では、私たちは特別な時代に生きているとも言えます。

日没からしばらく空を見上げていると、カシオペア座がゆっくりと昇って行くのが分かります。さらにしばらく見ていると、柄杓の形をした北斗七星が姿を現します。これらの光は、数年前?数百年前に放たれた光です。そして星々が織りなす星座の形は、アリストテレスやガリレオ・ガリレイが見てたものと同じものです。悠久の時と壮大な空間に想いを馳せつつ星空を見上げると、どこかもの寂しいように感じていた秋風が、いつもよりも心地よく感じられました。

-Cranberry Jam-

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