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華麗なバトンリレー -Forever Young-

2015年06月19日

 先日、地下鉄九段下駅でのことである。車内でおじさんが、「おい、忘れているよ」と叫ぶ。おじさんの方を向くと、優先席右端の座席からおじさんが右手にスマートフォンを持ち立ち上がろうとしている。どうやら、隣に座っていた女性が後ろのポケットもしくはバックの中からスマホを落としたようだ。その女性はちょうどホームに降りかけている。全く気がつく気配がない。先の駅に向かうおじさんは降りて女性を追いかけるわけにいかない。かなり困った様子で車両扉の方へ向かう。その時、電車を降りようとしていた中年男性が振り返る。すると、左手でおじさんからスマホを受け取り、電車を降りて、一目散に女性を追いかけた。その女性はずいぶん助かったことだろう。

一昨日、今度は立ち食いそば屋でのことである。食券機で食券を買おうとしていたおじさんが、「おーいつり銭」と大きな声を出す。一足先のお客のおばさんが、恥ずかしそうに笑みを浮かべながら食券機からつり銭を取り出す。暫くすると、店を出ようとしていた別のおじさんが、「誰かスイカ落としているよ」と叫ぶ。お客同士が顔を見合わせる不思議な時間が流れる。誰も入り口に落ちていたスイカが自分のものだと手をあげない。しかたがないから、店員のおばさんが、親切なおじさんからスイカを受け取る。そして、紛失者探しを引き継ぐ。すると、そばを食べ終え満腹になったさっきのつり銭騒ぎのおばさんが「あら、私のだ」と申し出た。しょうがねえなあ。相当疲れている。でも本当に幸せなおばさんだ。

こういうおばさん海外では通用しない。日本国内で落し物をすると戻ってくる確率はかなり高い。しかし、海外では落し物が見つかることはまずない。日本では落し物を拾った時、「あ!財布が落ちている。中のお金貰ってしまおうか。でも困っている人がいる。届けないとバチがあたるかもしれない。」と良心を咎める人が多いそうだ。一方、海外の人は「あっ、財布が落ちている。これは神様のプレゼントだ! That’s good」となるようだ。とはいえ、日本国内において、落し物が必ず見つかるわけではない。これが、落し物が見つかりやすい理由であるとは必ずしも言い切れないものの、かなり説得力がある。

相当、若い頃の話である。会社から異動の通知を受けた。所属部門の仲間がその日に送別会を開いてくれた。迂闊にも3次会で泥酔してしまった。家へどのように辿りついたのか全く覚えがない。翌朝、目覚めると財布と定期券がない。筆者の最寄り駅近くに勤める親切な方がたまたま拾ってくれた。そして、その方のお住まい近くの警察に届け出てくれた。翌日のお昼頃、警察から連絡を受けた。まだ、酔いが残る中で受け取りに行き、拾って下さった方に御礼を申し上げた経験がある。以降、このことが教訓になり、自分の行動は確り管理することにしている。九段下の駅でおじさんから中年男性への華麗なスマートフォンによるバトンリレーを見て、今週は感動を覚えるとともに、その後のそば屋での体験も交え改めて幸せな国に住んでいるのだと思わざるを得なかった。   

Written by Forever Young

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