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ゴロワーズという煙草 -Perverse Boy-

2014年05月23日

ゴロワーズという煙草を知っていますか?かく言う私は数か月前に知りました。

ゴロワーズは1910年に登場したフランス産の煙草で、フランスではジダンと並ぶもっとも有名なブランドとのことです。歴史も知名度もある銘柄なのですね。特徴としてはタバコ葉を堆積発酵させた黒タバコを使っていることです。香りは黒タバコ特有の強いものであり、それは香りというよりも匂いと言ったほうがいいかもしれません。

近所の煙草専門店に置いてあったので両切りのそれを買って吸ってみましたが、はっきり言って私にはきつ過ぎるものでした。普段チューハイやハイボールしか飲まない人間が、いきなりシングルモルトのスコッチ・ウィスキーをストレートで飲む感覚に近いのかもしれません。ただ本当に煙草の香りや味をたしなむ人には、くせになるほど美味しいものなのでしょう。

さて、なぜ私がゴロワーズを知ったかというと、私が参加しているバンドの選曲会議で、メンバーの一人が『ゴロワーズを吸ったことがあるかい』という曲を提案してきたからです。この曲は、かまやつひろしの1975年の大ヒット曲『我が良き友よ』のシングル・レコードのB面の曲です。A面の『我が良き友よ』は親戚のお兄さんの家で繰り返し聴いたので歌詞も覚えているほどなのですが、B面を聴いた記憶は全くないどころか、その曲の存在すら知りませんでした。

予備知識が全くないまま聴かされた『ゴロワーズを~』の感想は、とてもソウルフルかつファンキーでまるでモータウンから出てきたような曲だなというものでした。それもそのはず、バックはアメリカのファンクバンドの至宝、Tower of Powerが演奏しているのですから。

かまやつひろしが、当時来日していたTower of Powerにダメもとでバックの演奏をしてくれないかと頼んだところ、快諾されたのはいいのですがレコーディングは明日か明後日ということになり、その時点では曲も歌詞もできていなかったのであわてて好きなそれらしいコード進行をバンドに渡して、歌詞は当時ゴロワーズを吸っていたから、じゃあそれを唄ってしまえ、というのがこの名曲が生まれた経緯だそうです。1975年当時シングル盤のB面だったこの曲の評判は決して良い物ではなかったのですが1990年代に再評価され、今ではムッシュかまやつの代表曲の一つとなっており、様々なアレンジで演奏され続けています。

バックの演奏もさることながら4番からなる歌詞がとてもいいのです。1番と2番はパリの情景描写というかパリの観光案内のようなものでとても褒められたものではないのですが、それが3番に入ると一変します。
3番の唄い出しは「君はたとえそれがすごく小さな事でも 何かにこったり狂ったりした事があるかい」そして「そうさ、なにかにこらなくてはダメだ 狂ったようにこればこるほど君は一人の人間として しあわせな道を歩いているだろう」と締めくくられます。
更に4番の「君はある時何を見ても何をやっても 何事にもかんげきしなくなった自分に
気が付くだろう そうさ、君はムダに年をとりすぎたのさ」のくだりでは、まるで自分のことを唄われているようで、思わず考え込んでしまいました。このままつまらないオトナになってはいかんと。

ただこの曲を聴かされた時に大いに感激したのですから、まだ自分にはそこそこ感受性が残っていると考えたいのですが、何はともあれこのような名曲を40年前に作ったムッシュの天才的な先進性は素晴らしい限りです。

次回のライブではムッシュに敬意を表してこの曲を謹んで演奏させて頂きます。
 
Written by Perverse Boy

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