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リズム、ビート、ノリ、グルーブ -Perverse Boy-

2015年01月09日

私はいい歳をして、未だにロックバンドでベースを弾いております。13歳でギターを始め、14歳で初めてロックバンドを組み学園祭のステージで演奏しました。その後大学在学中までは継続してバンド活動を続けてきたのですが、社会人になり10年以上のブランクがあった後、10年前から本格的に再開し、今のバンドは今年で結成5年目になりました。今のバンドでは年2回のペースでライブをやっています。
 
先日のバンドのリハーサルで、とあるサザンロックの佳曲を演奏したのですが、リハーサル音源を聴き返すと、どうしても原曲の雰囲気が出せていない、そしてそれはリズムに原因があることが分かり、バンド・メンバーで、どうしたら原曲のリズムの雰囲気が出せるかという議論になりました。議論はドラムのハイハットの叩き方を変えるとか、ベースの跳ね方を変えると言った技術的解決策ばかりに偏ったのですが、メンバーの一人が細野晴臣さん(元YMOと言えばお分かりの方は多いと思います)の古いインタビューを紹介してくれました。下記がそのインタビューの一部です。

「それまで根も葉もないことをやるのがロックだと思われていたんですよ、実は。みんな、ただアフター・ビートで叩けばいいと。電気楽器で。ところが歳をとって耳が肥えてくると、ロックというのはそんなもんじゃなくて、非常に歴史があって、時代の変わり目のエッセンスをすくってきて、たとえばスウィングからロックに変わる時期にスウィングの片鱗が残ってて、ロックでもベースの人はウッドベースでスウィングを弾いてたんですが、ドラムはシャッフルからよりタイトになってきて、縦割りに8ビートになってきていた。そういう『ずれ』こそロックだということがだんだんわかってくるわけです。一種のポリリズムですね。そうしないと本当のロックのビートが出ない。ただ単にみんなが同じビートで、2−4でビートを刻んでも、ただの8ビートではそれはロックじゃないんです、厳密に言えば。」

とても含蓄に溢れたインタビューなのですが、簡単にまとめると:
・ロックも音楽の伝統から無縁ではない
・ジャズのスウィング全盛期は、シャッフル、つまりはねるビートが普通だった
・その後1950年代のロックの時代には、ドラムははねない8ビートを叩きはじめたのに、ベースは微妙にはねる感じを引きずった8ビートを弾いていた
・これを一緒に演奏すると、当然「ズレ」が生じ、「うねり」や「ゆらぎ」が生まれる
・この「うねり」や「ゆらぎ」こそロックの「ノリ」そのものである

上記インタビューを読んだ時に、まさに腑に落ちると言った感じで、メンバー一同納得しました。要は、リズムとは、各楽器のビートを「合わせる」ことではなく、それらを「混ぜる」ことでこそ生まれるのだ、と。学生時代は、バンド演奏とは全ての楽器がきっちりとビートを合わせることが肝要だと信じ込んでいたのですが、必ずしもそうではないということがようやくこの歳になって分かったのです。均等割りのビートと跳ねるビートを融合させ、その二つのビートの乖離度合を調合することで、ラテン、サザンロック、ブルース、パンク、そしてヘビーメタル等々の音楽のグルーブが作られているわけです。

たかがロック、されどロック。いつも新たな発見があり、実に味わい深く奥が深いのです。だからロックはやめられないのです。

Written by Perverse Boy

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