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“国境”を越えた自由な行き来の将来性 -Rilakkuma-

2012年03月16日

スイスに旅行すると、EU加盟国でないのにパスポートが要らない。あれ?と考える。スイスは、欧州域間で交わされた、検閲なしの自由な人の移動を保障する「シェンゲン協定」に参加しているからだ。EU加盟にスイスは経済的メリットを見出せず、国民投票で否決。しかし、08年にこのシェンゲン協定には加盟した。欧州という集まりは、絶えず変容する共同体。域内各国が可能な部分から、国境を越えた行き来を目指し、形が形成されていく。今欧州は、国境を越えた、「開かれた共同体」に集結する方向にある。そもそも国境とは、戦争と略奪後に引き直されたラインで、言語の分布とも、文化圏とも重ならない。

85年に交わされたシェンゲン協定が正に今、国境の持つ意味を問う。この開かれた協定は、欧州のリーダー国フランスで、先週否定された。先日サルコジ大統領が疑問視し、メディアに大きく取り上げられた。大統領選を4月に控えたフランスで、苦戦するサルコジ氏はこういった。
「自分が次期大統領に当選したら、1年以内に移民受け入れ制限に対する何らかの措置が提案されなければ、シェンゲン協定の参加を再検討する。」シェンゲンをやめるかもしれないということ。候補の発言に欧州の行方が見え隠れする。

現状、サルコジ大統領は、アンケート調査ではなかなか人気が上がらず、社会党オルランド氏に次ぐ2位から抜け出せずにいる。3位には頑強な移民政策で、治安に不安を抱く国民の感情を惹きつける極右政党のル・ペン氏が拮抗して続く。
一年前に、支持率40%で圧倒的だった、社会党元IMF総裁のストラスカーンがスキャンダルで消えた。その後のオルランド氏の柔和さ満足しない国民が、ル・ペン氏に流れる事もある。02年のように、左派を抜かして2位で得票する可能性もある。

先日若い世代のフランス人と話す機会があり、驚いた。若者にしてはめずらしく正確で美しいフランス語でこう言った。「フランスには移民が入りすぎて、外国人が増えすぎた。僕は、愛国心がある候補なら、極右政党でも、左派でも右派でも、政治信条は問わない。ユーロと平行してフランを使えばいい」と。昔はこういう発言を若者から耳にすることは少なかった。
欧州危機、治安悪化、失業率低下、経済低迷を経た後、欧州主導国は、どこに行くのだろう?

国家の存在そのものを、問い直す意見がある。将来国家はなくなり、それが資本主義の終焉を救うと。先を言い当てるフランス人経済学者といわれる、ジャック・アタリ氏(初代欧州復興開発銀行総裁)は、将来、国家の存在は弱まるという。彼は、このまま「市場原理主義」の行き着いた時、全ての民営化が進み、国家はグローバルな市場よりも弱い存在になる。貧富の拡大、国家間の格差の拡大。その時に、世界を導くのは、国境間を自由に行き来して生きるノマド(国境を越えた生き方をする人)であると。この生き方が世界的・地球的危機の解決に貢献する。という。

行過ぎた市場原理主義、資本主義、経済の低迷の行く末に悲観し、世界中の誰もが、解決と幸せを求めている。
欧州主導国の迷いが、多くを教える。

国境を越えた所に、将来の解決策があるのではないか?

 Written by Rilakkuma

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