メニュー
TIW Cafe

ミラクルと古き良き時代 -wildernesswolf-

2016年02月11日

年末に或るファンドマネージャー(以下、M氏)と飲んでいたときに、二人とも或る共通の人物(以下、K部長)が一時期上司であった、ということが発見された。もちろん、私とM氏は一緒に働いたことは一度も無い。
私にとっては数少ない尊敬できる上司の1人(心の師匠・当事は課長)であり、M氏にとっても神様みたいな存在だという。ロンドン在勤時には競合相手として戦った相手であったにも関わらず、M氏の会社が日本株から撤退して失業した直後に会いに行ったらその場で採用をしてくれたそうである。盛り上がった勢いで、年明けにK部長とM氏の3人で飲むことにした。

日程を調整して、場所は神保町ということで、私が『たかせ』という蕎麦屋に予約を入れた。
さて、その当日、どう考えても起こり得ないミラクルが起こった。

昼過ぎにM氏から「本日は宜しくお願いします」というメッセージがあり、「こちらこそ」と返信した。夕方に家内から「今日子供をこども園に迎えに行ってくれないか」とメッセージがあり、「今日はM氏と飲み会」と返事をすると、「それは明日でしょ!」と。

えっ!と思いスケジュール帳を見ると確かに明日の予定になっている。あわてて、『たかせ』に電話をして予約がいつになっているかを確認すると、やはり明日だと言う。スケジュールに間違えて書いたのではなく、そもそも日にちを勘違いしていたのだ。お店に今日に変更できないかと聞くと、既に予約で埋まっていると(丁重に)断られた。飲み会のスタート時間まで1時間も無い。

慌ててM氏に電話をかけて、「大至急代わりのお店を探します」と告げ、K部長に連絡して貰うようにお願いする。
食べログで検索して、『たかせ』から比較的近い場所にあった『蕎麦人弁慶』というお店に予約を入れる。再びM氏に電話をすると、K部長は既に会社を出てしまっていて連絡がつかないと言う。これは『たかせ』の店の前に行ってK部長を迎えなければならないと思ってあたふた出かける用意をしていたら再びM氏から連絡があった。
K部長は、『蕎麦人弁慶』に既に着いていて先に飲んでいると。

えっ?? 一体何が起こったの?
M氏が言うには、M氏がもともとK部長に連絡したのは、『たかせ』ではなく、『蕎麦人弁慶』であった、と。M氏は、私が連絡をくれたお店はもともと『蕎麦人弁慶』でしたよね、と言うのであるが、メッセージ記録を確認しても確かに『たかせ』になっている。M氏にスマホでそれを見せると「私が間違った店に、藤根さんが予約を入れなおした、ということです。助かりました-(^^)」と。

結果オーライだけど、未だに判然としない。
説明可能な理由があるとすれば、M氏には予知能力があるということである。確かにM氏の運用するファンドはパフォーマンスが凄く高い(M氏には予知能力があると考えれば全て辻褄が合う・・・・笑)。

さて、10数年ぶりにお会いしたK部長は変わらず若々しく、また変わらず素晴らしい人だった。64歳になる彼は、農業をやっている兄弟と実家のある広島県で果樹園を経営するプランを持っており、そこでハンディキャップの人たちを雇用する計画である。
しかし、一旦定年退職したものの会社に引き止められて未だに責任ある部署を任されている。後任の担当者が決まらない内に辞めてしまうのは、”誠”に反すると(それでもさすがに後1年で辞めさせてくれと会社には言っているようだ)。

誠心や義侠を矜持とするような人は、金融業界に限らずかなり減ってしまったような気がする。古き良き時代に戻ったような気がして、その日の酒は格別に美味しかった。

By:wildernesswolf

TIW Cafe 一覧 TOPへ戻る