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トリコロール -Cranberry Jam-

2012年11月02日

少々長めの休暇を頂いてフランス旅行にいきました。人生初のフランスです。エールフランスの機内でフランス語の食事メニューを渡された時から私の心は浮き立っていましたが、シャルルドゴール空港からバスに乗り、パリの中心オペラ座の真横に降り立った時は、小躍りするくらい高揚しました。視界に入る全ての建物が重厚で格調高く、シックでエレガントです。早朝5時パリ着の便だったので、街は映画のワンシーンのように静かでした。どこにフォーカスを当ててもどこを切り取っても美しい画になります。私は初めてカメラを手にした子供のように、無心でシャッターを切りました。

「ボンジュール」「サバ?」「サバビアン、メルシ」
街角からは挨拶言葉がよく聞こえてきます。カメラとガイド本を両手に抱えつつも、心はすっかりパリジェンヌ。早く「ボンジュール」と言ってみたい(笑)。早速見つけたブーランジェリに飛び込むと、店員さんに元気良く挨拶しました。そして勧められるがままにクロワッサンを購入。一口食べて衝撃を受けました。食感は、サクッ、フワッ、モチッのトリコロール。生地には謎のペーストが練り込まれていて、それが何かは分からずじまいでしたが、とにかく超絶美味。このパンの為に永住したくなるほどでした。

凱旋門、シャンゼリゼ、エッフェル、ノートルダム、オルセー、ルーブルなど色々な観光地に行きましたが、中でも印象深かったのはモンサンミシェルとベルサイユ宮殿です。
モンサンミシェルは神秘的なところでした。修道士たちは中世から変わらぬ暮らしを守っており、島に入るとタイムスリップしたようです。巡礼者も数多くいました。フランスには世界中の旅行者がいますが、どういう訳かここだけは日本人が目立ちました。祈りを捧げる場と美しい自然が渾然一体になっている所が日本人にウケるのかなと思いました。海の干満で姿が変わるところは、どこか厳島神社に通じるものがあります。

ベルサイユ宮殿は、その壮麗さたるや筆舌に尽くし難く、平凡な私には到底考えも及ばないような贅沢が、これでもか、これでもか、と迫ってくるようでした。この究極の非日常空間の中で日常生活を営んでいた当時の王朝一族の暮らしに思いを馳せずにはいられません。そして私たちは、その一族の末路を知っています。「・・・因果応報。」
完全なキリスト教世界の中で、口を衝いた言葉は仏教用語でした。庭園に至っては、もはやラビリンスです。あまりに広大すぎて、一歩足を踏み入れるとその幾何学的な人工美を確認できないほどです。庭に対する概念が決定的に違うと思いました。そこにあるのは心の平穏などではなく、自然さえも制御しようとする確固たる意思でした。

フランスでは、街並みも、絵画も、食べ物も、地下鉄のファシリティも、そこで働く人々も、庭園も、公衆トイレも、その全てが履き慣れないブランド靴のようで、外観はスマートだけどプラクティカルではないことが多いように感じました。成田空港の京成線の小綺麗なホームで、アナウンスが流れて電光掲示板の時刻通りに電車が来て、ドアが自動で開いて乗客が整然と乗り降りする様を見た時、「あ?、日本に帰ってきたな」と思いました。

Written by Cranberry Jam

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