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クルマの未来 -Cranberry Jam-

昨年の交通事故での死者数が、4,000人を下回りました。これは昭和24年以来67年ぶりのことで、交通戦争と呼ばれたピーク時と比べると4分の1以下に減少しました。昭和24年とは日本がまだモータリゼーションを迎える前の時代で、自動車保有台数はわずか20万台、現在の400分の1でした。
死者数の減少には様々な要因があります。例えば、緊急自動ブレーキ機能の普及、後部座席のシートベルト着用義務化、飲酒運転の厳罰化・取締強化、危険運転致死傷罪(刑法第208条の2)の新設などです。そしてこれらの諸要因に加えてもう1つ挙げられるのが、『ビッグデータの活用』です。

ホンダは、全国160万台のカーナビから、走行経路や速度など様々な走行データを集めています。データ量は1ヶ月で2億km相当に及び、渋滞情報やルート案内などに役立てられています。埼玉県の道路政策課では、ホンダが集めた県内の走行データを道路整備に利用しています。走行データを細かく分析すると、車が急にスピードを落とし始めた場所、そのブレーキの強さ、進行方向、発生時刻などを知ることができます。県内の車12万台分のデータを解析すると、1年間で70万回もの急ブレーキが踏まれていました。そのデータを地図上に落とし込むことで、急ブレーキ多発地点を特定できるのです。
例えばある交差点では月に8回の急ブレーキが発生していました。そこで現地調査を行ったところ、街路樹が生い茂っていた為に見通しが悪いことが判明。樹木を剪定し見通しを改善したところ、急ブレーキの発生回数は月8回から3回へと減少。他の場所でも、カーブミラー敷設や路面標示の明瞭化など様々な対策を行うことにより、急ブレーキの発生回数は激減しています。ビッグデータの活用により潜在的な危険箇所を特定できるため、実際の重大事故が起こる前に予防的に対策を取れるようになりました。

一方で、事故に占める高齢者の割合は年々増加しています。昨年の65歳以上の高齢者の死者数は2000人を超え、死者全体に占める割合は過去最高の55%でした。警察庁の資料によると、75歳以上の高齢者の死亡事故率は格段に高く、30代と比べると3倍以上もの確率で死亡事故を起こします。それに加えて、高齢者ドライバーは増加の一途を辿っています。平成10年には75歳以上の運転免許所有者は120万人だったのが、平成27年はその4倍増の480万人。死亡事故率が突出している高齢ドライバーの数が、物凄いスピードで増えているというのが現状です。

昨日、日産のゴーン社長は、「無人運転車」の開発・実用化に向けてDeNAと提携することを明らかにしました。DeNAは既にロボットタクシーや無人バスの実用化を目指して実験を行っています。さらにゴーン社長は、アメリカ航空宇宙局(NASA)の協力を得て、自動運転車が不測の事態で動けなくなった際に、人が遠隔操作できるシステムを開発したことも発表しました。自動運転で対処できない事態を人が補うことで、早期の実用化と普及が可能になります。
タクシー・ハイヤー業界最大手の日本交通の川鍋会長は、「これからのタクシー業界は自動運転の時代になっていくだろう」と述べました。2020年の東京五輪までにはトヨタが開発した自動運転タクシーのデモを行うようです。日本交通は毎日4千台のタクシーを走らせており、膨大な走行データが蓄積されています。このビッグデータを分析し、AI(人工知能)による自動運転に活かすのです。現状では渋滞時の走行ルート選択は主に個々のドライバー経験に頼っていますが、AIを使えば最適ルートが自動的に選択されるようになります。

自動運転は、スマートフォンに匹敵する大きなイノベーションです。そう遠くない未来では、AI制御による自動運転が当たり前になり、「人間が運転するタクシーなんて怖くて乗りたくない」という日が来るのかもしれません。

Cranberry Jam

[01.06.更新]