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世界にただ一つだけの味 -Forever Young-

先日友人とランチをすることになった。友人と言っても珍しく女性だ。「何がいい?」と聞いたら「和食」ときた。困った。知ってるとこなんかない。ネットで調べても、ピンとくる店がない。銀座に近い京橋に昔から通っているとんかつ屋がある。いつのことだっただろう。部下の女性と一緒に外出する用があった。終わったのがちょうどお昼頃だったのでこの店を訪ねた。そして、とても喜ばれた記憶がある。といっても当時、この部下はかなり若かった。「ちょっとヘビーかもしれないけれど大丈夫?」と小柄な友人に聞くと「任せる」ということだ。ということでこの店でのランチとなったが、結果は十分な合格点だった。

社会人になって数年目の頃だった。筆者は大宮から上野支店に転勤になった。ちょうどその頃、仲の良い同期生が京橋の中央支店にいた。会議で中央支店に寄った時に彼に紹介してもらったのがこの店との出会いだ。御徒町から銀座線で京橋に向かいよくこの店で彼と食事をした。当時はとんかつにコロッケを加えた「かつコロ」という定食をよく頼んだ。二人とも若かった。同期は残念だが若くして病死した。当時の中央支店ビルは再開発により今はない。このお店も日本家屋で趣があったが、今は近くのコンクリートのビルに移った。みんなどこかに消えてしまった。しかし、とてもジューシーだ。だけど、お腹が重くならない。加えて大根たっぷりの豚汁、そして、付け足しのお新香の味は変わらない。ご飯にお新香をかけると格別だ。昔とまったく同じである。そして、ここにしかない。
 
11時半を過ぎると行列ができてしまうことがある。この日は早く入った。定番のとんかつ定食を注文しこのお店とのいきさつを友人に話していた。そうしたら、店を仕切っているおばちゃんが「このお客さんずいぶんとうちの店は長い」と話に加わってきた。ちょっと強面のこのおばちゃんはいつもたんたんと仕事をしている。しかし、今日は「お茶おかわりいかが?」とずいぶん愛想がよい。女性と一緒だとこうも違うのか。長年変わらぬここだけの味への評価に加えてこの日は新たなバリューが加わった。吉野家の経営は牛丼という単品で他には出せない吉野家だけの味を出すことへのこだわりが支えているということを、先月の日経の私の履歴書で知った。長く繁盛して成功するには世界に一つだけの味なんだ。
 
先月、田舎で友人がイタリアンレストランを開いた。脱サラして、一流ホテルの修行から戻ってきた弟の話に魅力を感じ乗っかったと言う。開店パーティーに招かれた。「一流ホテルの味をコンセプトに独自色を出して頑張って行きたい」と友人が挨拶した。ぜひ、世界に一つしかないものを追いかけ成功して欲しい。などと言っておきながら、他の人にはない味のある人間に成長したいとずっと思いつつもなんの魅力もない自分自身がいつも情けない。時間はまだ少しありそうだ。もう少し頑張ってみるとしよう。

Written by Forever Young

[10.07.更新]