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風に吹かれて -Forever Young-

2012年03月30日

「我が国の参加のないTPPはポールマッカートニーのいないビートルズのようなもので日本がポール、勿論、ジョンレノンは米国だ」と例えTPP参加の必要性を説く野田首相をたまたま目にした。彼はビートルズにはまっていたのか。多感な学生の頃、私はギターを片手にハーモニカを吹きながら、ややしゃがれた声で力強く熱唱するボブ・ディランの虜になっていたことを思い出した。女性と腕を組み仲良く寄り添いながら歩くディランがカバーの名曲「風に吹かれて」が入ったアルバムを久しぶりに取り出した。歌詞を引用する。

How many roads must a man walk down  Before you call him a man ?
Yes、’n’ how many seas must a white dove sail  Before she sleeps in the sand ?
Yes、’n’ how many times must the cannon balls fly  Before they’re forever banned ?
 The answer、my friend is blowin’ in the wind  The answer is blowi’n the wind.

「男はどれだけの道を歩けば、一人前と認められるのか」「いくつの海を越えればいいのさ、飛び疲れた鳩が浜辺でゆっくり眠るためには」、「どれだけの砲弾を発射すれば、武器を永久に廃絶する気になるのか」との問いかけの繰り返しのあと、「その答えは風に舞っている」で締めくくられる。

2番、3番では同様に「為政者たちは、いつになったら人々に自由を与えるのか」、「一人一人にいくつの耳をつければ、他人の鳴き声が聞こえるようになるのだろうか」「人はどれだけの死人の山を見れば、これは死に過ぎたと気づくのか」、「山が海に流されてなくなってしまうのに、どれくらいの時間がかかるのか」などとの抽象的な問いかけが交互に繰り返えされたあとに同じく「答えは風に吹かれている」との締めくくりが来る。 1960年代の米国での公民権運動のさなかで生まれたこの歌は従来のフォークファンばかりではなく、既成の社会構造に不満を持つ人々に広く受け入れられたと言う。私が初めて耳にしたのは70年代、厭戦ムードがピークのベトナム戦争最終局面の頃だったような気がする。

あれから、いくつもの月日が流れた現在の世界、中東では民主化への動きが一時加速したものの、一部の国では為政者が体制を守るべく猛威をふるう。核保有は依然重要な交渉材料であり続ける。日本では昔話になったがバブルはどこかで生まれては弾ける。国内に目を転じると、冷静に考えれば有り得ないと解る高利回りのファンドがお金を集めて破綻する。事故の当時者は開き直って値上げで事態打開に動く。ついつい、「人類は、人間は何度同じ過ちをおかしたら間違っていたとわかるのか」、「いつになったら間違っているものをみて、それが間違っているとわかっていると頭でわかっていても、目を背けるやつが一番の悪党だと気がつくのか」などと歌ってみたくなってしまう。ディランのこの名曲が今でも普遍的であり続けることになぜか寂しさを覚える。

Written by Forever Young.

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