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クラーベで根比べ?

2014年10月10日

クラーベと言う単語をご存じの方は相当音楽に詳しい方だと思います。

クラーベとはラテン音楽で用いられるリズムパターンの一つであり、語源であるスペイン語のclaveは「鍵」という意味ですが、音楽用語では「調性(キー)」を指します。キューバ音楽で使用される、ソン・クラーベやルンバ・クラーベがその代表的なものです。

基本的なパターンは2小節からなっており、1番目の小節には3つの、そして2番目の小節には2つの音符があるので、3:2クラーベとも呼ばれています。
響きとしてはあえてカタカナで書くと、|タン・タッ・タン|ン、タン・タン、ン|という感じになります。

このリズムパターンはキューバ西部、特に首都ハバナを中心に発達したものですが、ルーツは現在のガーナやナイジェリアあたりの西アフリカであると言われています。それが20世紀初頭に米国のニューオーリンズに渡り、その後ロックロールやジャズに浸透していきました。20世紀初頭にはハバナとニューオーリンズの間に1日2便のフェリーが運航されていたそうで、双方の都市を行き来していたミュージシャンも多かったことから、クラーベが米国に渡って来たことはごく自然なことでした。クラーベはセカンド・ライン(second line)と呼ばれる、ニューオーリンズ独特の葬儀でのブランスバンドのパレードの演奏で用いられていることは有名です。

最近のポピュラー音楽で用いられている代表的な例としては、ドゥービー・ブラザーズの『チャイナ・グローブ(1973年)』のギター・リフとベースライン、ザ・ポリスの『死の誘惑(Death Wish、1979年)』のベースライン、そしてカルチャー・クラブの『カーマは気まぐれ(1983年)』のイントロのギターのリズム、等々が挙げられます。多分、お聴きになられれば、ああ、これかとお分かり頂けると思います。

ここでクラーベのことを書いている理由は以下の通りです。
私が参加しているバンドでミーターズ(The Meters)というニューオーリンズ出身のバンドがカバーしたビートルズのCome Together演奏することになったのですが、最初のリハーサルでの我々の演奏はただの重いロックになってしまったので、なぜミーターズのそれとはノリやグルーブが違うのだろうかという議論になりました。結論は、ミーターズの連中のノリはクラーベのそれをベースにしたものであって、我々は全くそれを理解できていなかったということでした。

ニューオーリンズのバンドですから、クラーベは彼らの血肉となっていて、意識しなくても自然にそのノリが出てくるのです。一方で我々は、ハバナにもニューオーリンズにも住んだことも行ったこともない一介の東アジア人。クラーベのノリを出すのは容易でありません。そこでクラーベのノリを出せるようになるまで皆で根比べしようということになったわけです。さらにクラーベ修行の一環として大滝詠一さんが作った『ハンド・クラッピング・ルンバ【1975年】』も演奏することになりました。この曲はまさにルンバ・クラーベを使ったものです。

クラーベは聴いていて大変心地よいリズムパターンなのですが、演奏するとなるとなかなか一筋縄では行きません。しばらく根比べが必要なようです。

 
Written by Perverse Boy

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