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アナリストコラム

10月2日から12年のスポンジチタン契約交渉始まる -溝上泰吏-

2011年09月09日

スポンジチタン価格は、国内外とも年間契約される。海外は暦年ベースで、国内は年度ベースであるため、3ヵ月はやい海外価格の動向が国内価格に影響を与えることになります。
その海外価格の交渉は年1回(10月初め)米国で行われます。今年はカリフォルニア州サン・ディエゴで期間は10月2?5日です。

本来の目的は、商社、メーカー、ユーザーなどチタン関係者が集まり、世界のチタン産業の技術や動向などを話し合う会合であるが、実体は商談の場となっています。
特に今年は、12年契約価格の動向が注目される会合だと言えます。スポンジチタンの原料価格が高騰するといった歴史的に無かった状況になっているからです。原料価格を製品価格に転嫁できるのかどうか注目されるのです。
統計では、純度の低い(純度60%以上)チタン原料の価格は従来比6倍に高騰しています。これは、中国など新興国で塗料などに使われる顔料(チタン原料の9割が顔料向け)の需要が高まっているためです。ちなみに、日本メーカーが使用する純度95%以上(一般的にスポンジチタン製造には純度90%以上を使用)の原料価格は同2倍となっているようです。原料鉱石は、金属元素で4番目に多いチタンでありますが、鉄鉱石や銅鉱石などと他の金属原料と異なり、チタン原料価格が安値で放置されてきたため、高純度に精製する豪州のメーカーが撤退したこともかさなったためです。
なお、国内スポンジチタンメーカーの11年のチタン原料契約価格(年間契約)は前年比4割上昇しています。今の状況から判断すると12年のチタン原料契約価格は同3割程度上昇するものとTIWでは推測しています。一方、11年のスポンジチタン契約価格には今回の原料価格上昇分が加味されていないので、12年契約交渉には、織り込まれるものと思われます。
スポンジチタンメーカーの在庫をゼロとして単純に計算すると12年のスポンジチタン契約価格は、前年比2割程度の上昇がないと吸収できないことになります。さらに、為替が円高傾向に推移していることを加味すれば、それ以上の値上げ交渉が必要になることになります。

11/3期の決算説明会で原料価格の上昇の説明をされていましたが、機関投資家及び担当アナリストへの浸透が不十分と判断したのか、12/3期第一四半期決算後の、個別IRミーティングで再度原料価格の上昇を強調したようです。これは、12年スポンジチタン契約交渉で、大幅な値上げを打ち出す戦略なのかもしれません。いずれにしろ今年のスポンジチタン価格交渉は注目度大です。TIWでは価格交渉の状況がわかり次第レポートを出す予定です。

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