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アナリストコラム

TOKYO AIMは、証券市場の救世主となるか!? -藤根靖晃-

2009年04月17日

ゴールデンウィーク明けにもTOKYO AIMに取引所免許が交付される見通しである。株式会社TOKYO AIMは、東京証券取引所とロンドン証券取引所の合弁会社であり、昨年の改正金商法を受け”プロ向け取引所”として開設される。証券取引所の国際的再編の流れと、2007年の経済財政諮問会議Study Groupにおける”自由でグローバルな市場創設構想”が合体した産物として登場する。

背景としては、投資家保護の強化の金融法制の流れの中で、四半期開示をはじめとしたディスクロージャーの強化、J-SOXの施行、取引所審査の強化によって、既存の株式市場(取引所)では、厳格な規制に合わない企業(あるいは金融商品)や、規制に関わるコストが重すぎて上場するメリットが得られないケースがあり、閉塞感が強まっていたことがまずは挙げられるだろう。また、既存の新興3市場においては、個人投資家のシェア(買い代金)が70%以上を占め(東証1部は30%未満)、その結果、上場直後に急騰し、高値をつけた後に株価が低迷するという構造に陥りやすく、企業の追加的な資金調達を困難にしやすくなっているという問題もある。

IPO社数の減少は、第一義的には金融・経済危機に伴う株式市場の低迷にあるとしても、新興市場に対する投資家の不信や、前述したような株価形成の構造的な問題がそれ以前(2006年頃)から存在していることからも新ルールに基づく取引所が必要とされていると言える。

詳細は割愛するがTOKYO AIMの特徴は、1)上場基準に数値基準(株主数・売上・利益額・時価総額)が無いこと、2)監査証明は直前年度のみでよいこと、3)内部統制報告書、四半期開示は任意、4)特定投資家のみが投資できる(非居住者には適応されない)、などが挙げられる。中でも最も大きな特徴は、指定アドバイザー(J-Nomad:原則は証券会社)が上場を審査し、継続的にサポートし、あるいは指定アドバイザーを降りることによって上場廃止を決定することができることである。
これらの制度を活用することで、これまで既存の上場市場にはあまり向かなかったバイオなど研究開発型企業の上場や、大手企業の非戦略子会社のM&A先を探すための上場、VCファンド、ヘッジファンド、バイアウトファンドなどの上場による資金調達、などが期待されている。

ただし、TOKYO AIMについては否定的な見方も多い。国内の機関投資家がコンサバティブなのでリスクの高い企業が上場しても結果的に資金が集まらない。予備的市場と考えた場合に海外の企業が上場しても東証(本則市場)は日本語開示が求められるので出口がない、など。確かに既成の考え方、既存の新興企業を対象に考えるのであれば限界があるのかもしれない。

しかし、TOKYO AIMに対する証券業界へのメリット、可能性についてはあまり語られていないように思われる。
指定アドバイザー(J-Nomad)は、上場時および公募・売出し時にのみ収入を得られる従来の幹事証券と違って、指定アドバイザーを維持することによって、継続的に収入を確保することが可能になる。上場会社を監査すると同時に指導・育成してゆく機能を証券会社が担うことになる。これは戦後から高度成長期にかけて銀行が担っていた機能にあるいは似たものかもしれない。ブローカー業務ではビジネスが難しくなっている証券会社のビジネスモデルを変革し、収益基盤を再構築するだけでなく、日本全体の産業再生に活路を開く可能性が示唆できる。

証券会社をはじめ周辺も含めた証券ビジネスの担い手がビジネスとして存立できない状況が続くことによって資本市場全体のシュリンクは加速してゆくだけに、TOKYO AIMには救世主となって欲しいと心底願う。

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