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アナリストコラム

11/3期本決算発表を終えての印象  -高辻 成彦-

2011年05月27日

今週までで機械セクターに関しては、11/3期の本決算発表シーズンがほぼ終了した。このところ全般的に株価が冴えない印象だが、何故なのか整理して考えてみたい。

第一は、例年と大きく異なり、東日本大震災の影響が見通せないとして、12/3期会社計画の公表を見送る企業が多く出たことだろう。評価のベースとなる会社計画が存在しないため果たして増収増益基調を維持するのか、減収減益に後退するのか不透明感が募っている。

第二は、調達面の影響が十分には見通せないことである。直接の取引先までは見通せても、それ以上の下請けの段階にまでなって来ると、十分には把握しきれないだろう。部品調達面での懸念は全くない、とはっきり断言出来る会社は少ないと思われる。

第三は、夏場対策の影響がどう出て来るか見えないことである。電力供給量が増えれば、節電で凌げる確度は高まって来る。しかし、全産業の取り組みの結果次第であるため、一企業のみで断じるのはなかなか難しいだろう。

第四は、東京電力(9501)の福島第一原子力発電所の事故収束時期にまだ不透明があることである。果たして工程表通りに収束するか、まだ余談を許さない状況にある。

国内に関しては以上の理由が主に株価が冴えない原因になっていると推測する。この他、中国や北米、欧州などの外需の動向や為替動向などの理由も影響していると思われる。

4月の需要状況を各社から聞いている限りでは、前年同月比でマイナスになっている企業は意外に少ない印象である。単月のみで今後を判断するのは早計と考えるものの、リーマンショックの時のように、短期間で急速に景気後退に突入する、といった状況には至っていないと現時点では見ている。

では、今後の株式市場の変化点としてどのような材料が必要だろうか。

第一は、今後12/3期1Q(4-6月)決算発表時には公表が予定される各社の12/3期会社計画だろう。判断材料となる会社計画の数字が見えれば、株式投資をする上で安心材料となる。従って、現時点で既に会社計画を公表している会社の積極姿勢は評価出来るだろう。

第二は、政府の対応だろう。今後、東日本大震災からの復興に向けた政策対応がどう出て来るかで、日本株の投資魅力も変わって来る。電力料金などのインフラコストが値上げされるとなれば、投資魅力は後退するだろう。復興のための財源確保という名目でむやみに増税が実施されれば、投資魅力はおろか、景気が後退する恐れもある。

当面は政府対応がどう出るかで、各社の株価にも影響を与えることになりそうだ。各銘柄を見る上で、震災の復興需要を今後どう享受するかは重要なポイントの一つではあるものの、マクロ環境そのものが不安定になっている現状では、需要変化への対応に強く、IRがしっかりしている銘柄が投資対象として無難と言えそうだ。また、このような状況の時こそ、社会的責任を積極的に果たそうとする会社が評価されるだろう。

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