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アナリストコラム

デジカメメーカー各社 生き残りのレースへ

2009年01月16日

09年1月5日カメラ映像機器工業会(CIPA)が発表した08年11月のデジタルスチルカメラ総出荷額および台数は、9月のリーマンショック以降の世界的な個人消費意欲の後退を如実に表す結果となった。総出荷額は1,822億円(前年同月比20%減)と10月の2%減から大幅に後退。出荷台数においても1,153万台(同ほぼ横ばい)と長らく続いていた2桁成長から急速に鈍化した。内訳はDSC(コンパクトデジカメ)が1,063万台(前年同月比1%減)、D-SLR(一眼レフデジタル)が90万台(同14%増)。DSCにおいては08年1-10月累計の7%増からマイナスへ転落し、D-SLRは依然2桁成長を続けているものの、同じく08年1-10月累計の36%増からは鈍化傾向となった。

そして、一台当たりの平均出荷単価も前年同月比20%減と大幅に低下した。もちろん、デジタルスチルカメラはDSCとD-SLRに大別され、従来相対的に安価なDSC市場はプレイヤーの多さから過当競争となり易く、前年同月比10-15%程度の価格下落が常であった。しかし、今回の11月発表の平均単価はDSCに加え、価格下落の影響が比較的緩やかなD-SLRが約3割の価格下落に見舞われた。一部為替影響を含んでいると見られるが、地域別には欧米で一段と価格下落圧力が高まった印象だ。

それを裏付けるように、08年11月28日「ブラックフライデー」以降の米国クリスマス商戦は、大幅な値引き競争から始まっている。ウォルマート・ストアーズが売れ筋の32型薄型テレビを400ドルを切る価格で販売し、家電量販店トップのベスト・バイも更なる低価格攻勢で追随した。大幅値下げが奏功してか、NRF(全米小売業協会)が11月末に発表した客足調査では、買い物客数は前年同月比17%、客単価も同7%程度増加しているが、11月におけるデジタルスチルカメラの北米向けの一台当たり平均出荷単価はDSC16%減、D-SLR27%減と10月から値下げ幅が拡大している。

そして12月に入り、米国の消費環境は混沌を極めている。09年1月14日にNRFが発表したクリスマス商戦(11-12月)の売上高は前年同期比2.8%減の4,475億ドル。95年に統計を開始し初の減少となった。出だしの大幅値下げによる販売好調も12月下旬にかけ息切れした格好。次に発表される08年12月のデジタルスチルカメラの総出荷額は引き続き逓減傾向が続くと考えられる上、年末ぎりぎりまで品物購入を迷っていた消費者の存在が更なる値下げを誘発し平均価格の低下も顕著になる可能性があるだろう。

メーカー各社は当面、在庫調整のための価格競争の激化を余儀なくされると考えられる。そして、金額ベースで市場規模のシュリンクは加速的に進展すると想定され、メーカー各社の収益性の確保も困難な情勢が続く可能性は高いだろう。製品差別化が難しくなったDSC市場は泥仕合の様相を深めてゆき、低位シェアメーカーの目の前を「再編」の2文字が飛び交う日も遠くはないかも知れない。

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