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アナリストコラム

電気自動車について考える(東京モーターショーを見学して) -高田 悟-

2009年10月30日

先週第41回東京モーターショーを見学した。自動車不況や外国勢の中国シフトなどを背景に参加企業数は前回から半減した。海外企業の参加減に加えゴージャスなスポーツカーなどの出展が少なく華やかさには欠けた。しかし、参加各社の環境技術をアピールする出展で自動車社会の近未来を考えることができ大きな収穫があったと感じている。

ホンダのブースを通りかけた時だ。ホンダの精神「ないものをつくれ」のアナウンスとともにショーが始まった。ソーラーハウスを思わせるパネルの裏から2足歩行ロボット”ASIMO(アシモ)”とともにホンダ躍進の原動力となったスーパーカブが電動化(EV-Cub)され登場した。LEDヘッドライトの採用が可能にしたのか従来に比べ顔は小さい。エンジンや燃料タンク、そして吸排気装置がないためタフ感はないが実にスリムだ。通勤程度の利用なら走行距離は大きく求めない。従来のエンジン車に比べてのコストパフォーマンスの良否は見えないが、こんな二輪車に乗れたら少しおしゃれかもとの思いが沸く。筆者にとってはエンジンのない車の時代到来を至って身近に感じた瞬間となった。

続いて他社のブースを巡った。エンジン車も含め最新の環境技術を搭載した車の展示が各社の目玉だ。今後市場登場見込みの電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV、家庭で充電できハイブリッド車(HV)に比べ電池とモーターでの走行比重が多い)の展示がとにかく目につく。ガソリンエンジン車との価格差縮小などから今年に入りHVの普及が加速した。しかし、エンジン走行が主なHV車では排出ガスをゼロにできない。このためHV車の普及は過渡的でEVなどエンジンのない車が長期的には四輪自動車の主役になると各社ともに見ているのだろう。

リチウムイオン電池の登場でEVが現実的となった。今夏には一部完成車メーカーで市場投入が始まった。また他完成車メーカーも将来の量産計画を発表するなど最近EVの話題には事欠かない。㈰ゼロ・エミッション(排出ガスゼロ)に加え、㈪発進から最大トルクを発揮する加速性能、㈫車内、周囲への騒音がない、㈬家庭でエネルギー補充が可能、㈭蓄電機能、㈮ランニングコストが安い、などの多くのメリットがEVにはある。一方で㈰価格が高い、㈪航続距離が短い、㈫充電時間が長い、㈬小型車しか選べない、などのデメリットや社会インフラの未整備が現状EV普及の妨げだ。逆に考えれば、メリットへの認識が深まりデメリットが緩和されれば本格普及が近づくと見られる。

デメリット克服には電池やモーターの性能向上もさることながら、消費電力を抑えるため車体軽量化が従来に増し重要になる。加えて低コスト化、安全性強化も大きなポイントだ。EVの部品点数はエンジン車の三分の二程度ですむと言う。エンジン関連などを中心に不要な部品がかなり出てくるためEV普及に拍車がかかることで既存自動車部品メーカーの成長基盤低下を見込む向きも多い。しかし、例えばハイテン材(高張力鋼板)などに代表されるように、軽量化などEVのデメリット緩和に必要な技術は国内自動車部品メーカーの最大の強みでもある。この意味でEV時代のものづくりを支えるという新たなオポチュニティが国内自動車部品メーカーには増しているとも言えよう。そんなことを考えながら、直接省電力に繋がる小糸製作所のLEDヘッドランプ、EVやPHEVでは一層重みが増すと見られるデンソーやケーヒンのECU(電子制御装置)などを丹念に見て回った。  

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