先日、あるレストランバーで鰻（ウナギ）を薦められたのだが、断った。
「嫌いですか？」と聞かれたので、「全然好きだけど、絶滅が危惧されるものを食べちゃいけないでしょ」と言ったら不思議な顔をするので、「それじゃあ貴方は鶴を食べますか？」と言ったら今度は怪訝な顔をされた。

確かに鶴は禁猟指定されており、タンチョウ、ナベツル、マナズルはいすれも特別天然記念物に指定されている。しかし、それは明治以降の話であって、江戸時代中期頃までは食用とされていたようである。七面鳥や雉（きじ）に似て美味だという説もあるようだ（余談だが朱鷺は血なまぐさくて不味いそうだ）。

鰻に話を戻すが、稚魚が取れなくなって供給が少なくなればその結果、価格が上がって需要が少なくなるので、結果的に種の保存が保たれるだろう、と言う人が居る。そうなる可能性は否定できないものの、これは無責任で自分勝手な意見だと思う。何故なら、まだ、鰻の生態すら十分に解明されておらず、稚魚の養殖も実験室で漸く成功例が出てきたレベルにしか過ぎないのだから。

このまま行けば、10年、20年後くらいには捕獲制限が強まって食べられない食材になるに違いない。
「昔は鰻ってものがあってさ、美味しかったんだよ」と孫に語るような将来が待っているかもしれない。

行政など上から決められないと自分を律することが出来ない、周りが皆やっていれば自分もして構わない。それは日本人に染み付いた無責任・依存体質でしかない。
周りがどうであろうと、自分だけが損であっても、自分の基準で何事も決断・実行する。
一人ひとりがそうした性質にならない限りは、民主主義は機能しない。
失われた20年の後にくるのは、間違いなく失われた30年だろう。

ちなみに私は、クロマグロも食べない。

wildernesswolf