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地域間格差 -Cranberry Jam-

2014年05月09日

最近見たテレビ番組が衝撃的な内容でした。NHKのクローズアップ現代で、タイトルは「独立する富裕層」。アメリカでは、貧富の格差と社会の分断が行き着くとこまで行っているというお話です。

アメリカでは、住民が自ら境界線を決めて新たな市を作ることが出来ます。住民が法案を州議会に提出し、その後の住民投票で賛成多数となれば、新しい自治体が誕生するのです。「所得の再配分は人のお金を盗む行為だ」、「自分が支払った税金が貧困層の救済に使われるのは我慢ならない」などと考える富裕層が、自分達の住む地区を周囲と切り離して新たな市を設立するケースが増えており、住民の平均年収が1000万円を超える市も誕生しています。その一方で富裕層を失った自治体は税収が減り、公共サービスの質を維持できなくなります。サウスフルトン市では、税収減による予算削減の影響が至る所に現れました。ゴミ収集が2週間に1度に減り、図書館の開館時間が短縮され、公立病院の医師が減らされ、公立の学校が減り、刑務所の維持が予算的に困難になったために囚人が開放されました。

『エリジウム』というハリウッド映画があります。地球環境が絶望的に悪化した22世紀、富裕層はスペースコロニーで理想的な生活環境を享受し、地上には貧困者だけが残って過酷な生活を強いられるというストーリーです。このSF映画のような「富裕層の楽園vs貧困層の地獄」という構図がアメリカ社会には現実に存在し、前時代的なアパルトヘイトのような「貧困者隔離政策」とでも言うべき事態が、法案の提出という合法的な手段で、しかも住民投票という民主的な手続きを踏んで、着々と進んでいるのです。格差の拡大は機会の平等を奪い、階層が固定化して社会が分断され、一部地域が荒廃して治安が悪化します。富める者だけが豊かさを享受できるアメリカ社会。行き着く先は、映画『エリジウム』のような戦いかもしれません。

日本でも昨今「二極化」という言葉をしばしば耳にします。正規雇用と非正規の収入格差や、地域間格差などの問題があります。大都市への一極集中が進むと、地方は税収が減って地盤沈下していきます。前述のサウスフルトン市のように、公共サービスの質が著しく低下する自治体が現れるかもしれません。

日本では2008年に、私たち一般市民が地域間格差の解消に一役買えるシステムが誕生しました。「ふるさと納税」です。「納税」という名前がついていますが、実際は「寄付」です。地方自治体に寄付をして確定申告をすると、既に支払っている住民税から還付を受けられる仕組みです。還付金の枠を上手く利用すれば、実際の出費は2000円で済みます。例えば3万円寄付したら、2万8000円の還付金を受け取れます。寄付する対象は、地方自治体であれば「ふるさと」に限らずどこでも構いません。

自治体によっては、その土地の特産品をくれる所があります。例えば宮崎県小林市に3万円寄付をすると、「太陽のたまご」という高級マンゴーを3玉もらえます。北海道紋別市ならカニがもらえます。実質わずか2000円の出費で宮崎マンゴーやカニが入手できるのです。財政が潤沢な都市に住む人が「ふるさと納税」で地方に寄付をすると、寄付を受けた自治体も嬉しいし、寄付した人もその地方の特産品が貰えて嬉しいというまさにウィンウィンの関係で、しかも地域間の経済格差の是正に寄与することにもなります。一石二鳥ならぬ、一石三鳥のよく出来た制度です。

テレビ番組で、究極の格差社会であるアメリカが如何に歪んでいるかをまざまざと見せつけられ、富裕層の一部が恥ずかしげも無くエゴイズムを剥き出しにして社会的弱者を切り捨てる姿を見て、日本の二極化の流れを何とかして止めなければならないと感じました。私は、ふるさと納税制度を積極的に活用したいと思います。アメリカを反面教師として、より公平で平等な社会の実現に寄与するために。そして、地方の美味しい特産品をお得にゲットするために。

Written by Cranberry Jam

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