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ロボットのカラクリ -Cranberry Jam-

2014年09月26日

昨日(株)村田製作所が、「村田製作所チアリーディング部」という名称の玉乗りロボットを発表しました。10体のロボットがボール上でバランスを保ちながら、統率の取れた動きでフォーメーションダンスを行ないます。ロボットはボールの上に乗っているために、全方位に自在に動くことができます。今にも倒れてしまいそうですが簡単には倒れません。カメラの手ぶれ防止機能にも使われるジャイロセンサにより、絶妙な平衡感覚を保っています。ペットボトル程の大きさの女子型ロボットが隊列を組んで踊る映像は、可愛らしく、微笑ましい様子でした。

日本は世界に冠たるロボット技術大国ですが、実は長い伝統にも支えられています。アイシン精機の子会社アイシンAWの工場では、電気も油も全く使わずに自動で物を搬送する「ドリームキャリー」という装置が使われています。動力源は、バネと、搬送物の重さです。物を載せるとその物の重さでバネが押し込まれて装置が移動し、物を下ろすとバネの復元力で元の位置に戻ります。この原理は、江戸時代に作られた「茶運び人形」の仕組みを応用したものです。他にも、ロボットアームには「弓曳き童子」というからくり人形の機構が応用されており、たった1つのモーターで複雑な動きを実現するため、これまたほとんど電力を使いません。

「弓曳き童子」は、「矢立てから矢を取って弓につがえて的を射る」という複雑な動きをするからくり人形で、田中久重(1799−1881年)によって作られました。田中久重は、万年時計を製作したことでも知られています。万年時計は一度ゼンマイを巻けば一年間も動き続けることができ、これは機械式時計としては驚異的な持続時間です。

久重は晩年、「田中製作所」を設立しました。これが、現在の東芝へと発展してゆきます。さらに、田中製作所でモノ作りの技術を学んだ久重の弟子たちが、いくつもの会社の創業に携わりました。沖電気(沖牙太郎)、宮田工業(宮田栄助)、池貝(池貝庄太郎)などです。江戸時代のモノ作りの第一人者である田中久重の精神は、21世紀の日本にも脈々と受け継がれているのです。

さて、最新ロボット「村田製作所チアリーディング部」のダンスパフォーマンスでは、10体のロボットはぶつかりそうでぶつかりません。それぞれのロボットが自身の位置を正確に把握し、その位置情報を制御ホストシステムへ通信で伝え、動きの指示を受けているからです。位置の把握には音と光が使われます。外部から超音波と赤外線を同時に発信し、それら2つを受信する時間の差により現在地を測定します。花火を見てから音が聞こえるまでの秒数で、花火までの距離が分かるのと同じ原理です。

複数のロボットがお互いの位置を把握しながら協調する「群制御技術」は、災害現場での探索ロボットに応用できるそうです。先月の広島土砂災害は記憶に新しいですが、行方不明者の早期発見と救助に「村田製作所チアリーディング部」の技術が活かされる日もいずれ来ることでしょう。何年か後には、災害現場に大量のロボットが投入されるのが当たり前になるのかもしれません。

Written by Cranberry Jam-

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