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アナリストコラム

ファンダメンタル分析は既に時代遅れだ! -藤根靖晃-

2017年09月15日

日本の機関投資家はどうして高いパフォーマンスを出すことが出来ないのか?ということについて昔から考えている。
彼らはプロの投資家ではなく、金融機関のサラリーマンであり、リスクを伴う他人と違う行動を選択しないため秀でたパフォーマンスを出すのは難しい、ということは昔からよく言われている。それに関する議論はまた別の機会にするとして・・・・そもそも一般的な機関投資家の投資手法そのものが時代遅れではないかと考えている。

伝統的なアクティブファンドの手法は(私の認識ですが)、まずマクロ経済分析があり、次にセミマクロの業界動向の調査があり、業界ごとのアロケーションを決定し、その中で各業界の有望企業を抽出するというもの。
この手法の問題点は、第一にグローバル化が進行したことから本来は世界全体の調査が必要となるがそれを実行できるだけのリソースを確保するのが困難であること(リソース不足)、業際化が進んだことにより特定の業界に分類できない企業が多く存在し、単純な横比較が出来ないことである。
また、将来の市場規模や競争環境の分析は当たらないことが多く、特定の予測にベットするのはリスクが高い。また、セクターのアナリストは専門家であろうとすることで蛸壺に嵌まっているケースも多いように感じる。

外国人に限らないが、優れたパフォーマンスを出しているファンドは、考え方が違う。最初にクオンツ的手法からサスティナビリティが高い企業を選出し、その上で企業調査を行いサスティナブルな要素(組織・文化・経営者・技術・戦略)をファンダメンタル調査の中で見出す。これはあくまでも確認作業として行う。実績データをベースに、サスティナブルな特徴(フラグ)を抽出し、その根拠を定性的に確認し、それにベットする。一定の比率で期待を裏切るものが出てくるだろうが、比較的幅広く網をかけることで全体としては成功する可能性が高い。

森(セクター)の中から木を探すのではなく、木の種類(クオンツ的な独自基準による)を特定してそれを広く探すという手法である。行き当たりバッタリ足で稼ぐわけではない。

もちろん、セクター(業界)を無視しているのではなく、全てのセクターに関して最低限の知識を備えていることが前提となる。

TIWも2012年頃にセクターに偏った調査からROE重視に変更したのもこうした発想からである。まだまだ十分ではないがTIWモデルポートフォリオが比較的高いパフォーマンス実績を出している背景にはそうした思想的な転換が大きい。

本格的に行うには資金量が重要であるが、むしろ柔軟に投資プロセスの変更が可能な個人投資家に向いていると思う。(確認していないが)実際に成功している個人投資家はやはり同じような発想ではないだろうか?

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