世界の新車市場は08年秋のリーマンショックにより一旦6,000万台半ばへ縮小した。しかし、主に新興国での需要増を受け金融危機から僅か3年で新車市場は約1,000万台回復した。11年(暦年)の世界販売台数は7,500万台弱に達したと見られる。この間、中国市場は年900万台程度から1,000万台後半の市場へ急成長を遂げた。足下の販売には失速感があるものの金融危機後の世界自動車市場回復への中国市場の貢献は極めて大きい。
中国躍進で世界2位となったとはいえ、米国市場の回復も見落とせない。中国とは対称的に1,000万台程度へ急落した市場は10年には1,155万台(前年比11%増)となり、11年は1,274万台(同10%増)で着地した。ピークの1,700万台は遠いが、日欧先進市場低迷の中で、新興国とともに世界の自動車市場の拡大を支えていると言えなくもない。
12年の世界販売は米国市場が支えるとみる。欧州問題から拡大加速は見込み難いが1,360万台(前年比7%増)から1,400万台(同10%増)が望めるのではないかと考える。(1)選挙年でもあり金融緩和策継続と長期金利低下に支えられ景気は回復傾向を辿ると想定される、(2)失業率の改善やクレジット市場回復が期待できる、などが主な理由だ。
また、約2億5千万台の自動車保有を抱えての潜在需要、人口増などを踏まえると住宅バブルに踊った金融危機前の水準に戻るのにはまだ時間がかかるとしても中期的な販売増が見込め先進国の中の成長市場として注目を集める日も近いとみている。
一方、緊縮財政を背景に景気停滞が見込まれる欧州は当面厳しい。12年の販売は前年並みの1,900万台程度に止まるだろう。新興国は中国、インドの販売は金融引締めの余韻を残し前半は踊り場が続くとみるが資源国は自然増が期待できよう。日本は大震災からの復興需要とエコカー減税、補助金効果により420万台から500万台近くまで販売拡大が予想される。そして市場規模世界第3位は維持されよう。
中東情勢緊迫、原油価格急騰、欧州問題のハードランディングなどのリスクはあるが、基本は米国の回復継続、特殊要因による日本の増加、周辺新興国の成長、などにより世界の新車販売は7,800万台程度まで拡大が見込めるまずまずの年になるとみる。
こうした中、環境は日系完成車メーカーにとって悪くはないと考える。更なる円高への懸念は残る。しかし、母国市場に加え、大震災やタイ洪水影響による供給への影響がなくなり、そもそも主戦場としてきた米国市場で販売増が望める。米国での数量増はピックアップトラックやSUVなど大型車増による販売構成良化にも繋がる。日系に限らず米国で数量を伸ばせる先の業績に期待が持てる。特にシェアを大きく落としたトヨタ、ホンダの挽回の行方が注目される。これは日系を代表する2社のシェアダウン(2社合計の11年市場シェアは前年の25.9%→21.9%へダウン)が殆ど自然災害の影響だったのか、はたまた商品や販売戦略に問題があったのかを問われる年であるとも言える。