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アナリストコラム

11年度、国内化粧品大手は転換点を迎えている -高橋俊郎-

2011年05月20日

化粧品大手各社は、08年のリーマンショック後も多くの女性の必需品であるため大きな落ち込みはなく、相対的にみると堅調な業績推移であった。しかし、需要減を取り戻せないまま2年が経過している。その一方でドクターシーラボなどの一部メーカーが伸張している。

10年の国内化粧人口は約5,600万人。今後は化粧品人口の減少が予想されるため、国内化粧品市場での伸張は容易ではないだろう。それに比べ、中国の化粧品人口は10年で1億人、15年で2億人、20年で4億人になると推定されている(資生堂調べ)。しかし、世界の化粧品メーカーが成長市場として中国進出をしており、すでに経済成長の著しい沿岸部ではなく、内陸部への進出が焦点となっている。そのため、進出時数年は拡販が可能だろうが、持続的な拡大は容易ではないだろう。

ドクターシーラボなど、㈰コンセプトがわかりやすい、㈪機能が付加されている、といった化粧品は伸張しているが、国内大手化粧品メーカー(資生堂、花王、コーセー、ファンケル)は、リーマンショック後の減少から自律回復とは言いがたい状況である。そのため、各社は今期大きな転換点を迎えようとしている。資生堂、コーセー、ファンケルの3社は国内の事業構造改革や海外展開の加速のため費用増を計画しており12/3期は営業減益になる見通しを発表している。

資生堂は、05/3期の国内化粧品売上高4,737億円から11/3期では3,829億円と約900億円の減収となっている。そのため、今期は成長投資強化として200億円の費用増を計画。200億円の内訳は国内70億円、海外130億円程度を想定。海外重視の姿勢は変わらないが、国内化粧品の建て直しが急務である。同社の国内化粧品は市場の落ち込み以上に苦戦が継続しているからだ。この費用増のため、12/3期の営業利益計画は前期比10%減の400億円としている。

花王の化粧品ブランド「ソフィーナ」は、11/3期にブランドの絞込みをしたことにより、堅調に推移したもよう。しかし、プレステージ化粧品は、赤字幅縮小傾向ではあるものの、依然営業赤字である。カネボウ化粧品に関するM&Aに関するのれんおよび知的財産権償却費285億円を除くと営業利益▲6億円と収支均衡に近づいているものの、向こう1?2年程度はカネボウ化粧品の人員を配置展開や業務の幅を持たせることで収益改善を計画しているため、黒字体質の定着には時間がかかる見通しである。ただ、化粧品以外は堅調な業績を残せるため、12/3期の営業利益計画は前期比0.4%増の1,050億円としている。

コーセーは11/3期までの中期経営計画で専門店の先鋭化を実施した。この施策は計画比で約90%の進捗であったもよう。同社の強みのある高価格帯(5,000円以上)のうち、「アルビオン」などのブランドは前期比プラスに転じるなど相対的に堅調に推移している。しかし、海外展開は競合他社に比べ出遅れ感があり、今期は海外拡大に向けた準備の年と位置づけ費用増を計画している。そのため、12/3期の営業利益計画は前期比28%減の100億円としている。

ファンケルは、「ファンケル」ブランドの再構築を目指すための準備の年である。中国・香港では高品質とのブランドイメージを確立しているが、国内では「肌の弱い人向け」のイメージが定着しており、国内販売は伸び悩んでいる。そのため「無添加」を世界共通の価値観としてブランド価値を向上すべく、リブランディング費用として18億円を計画。そのことを主因に12/3期の営業利益計画は前期比16%減の60億円としている。


資生堂、コーセー、ファンケルの12/3期は減益計画。販管費コントロールによっては黒字化も可能と考えているが、今後の事業拡大のために投入確度が高いだろう。今期は化粧品各社の事業改革がどの程度進捗するかが注目点となるだろう。

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