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アナリストコラム

レアアース(希土類)、中国依存からの脱却急務だが… -溝上 泰吏-

2011年02月25日

中国の日本向け希土類の輸出が停止になって以降、各メディアでレアアース、希土類の文字を見ない日がなくなった。
最近ではレアアース生産拡大計画が降って湧いたようにでてきた。しかし、よくよく考えると、そもそも鉱山開発はかなりの時間がかかるもの。新鉱山が生産開始ということは少なくとも数年前までに探査が終了し、商業化(FSなど)できるかの調査を終えてなければなりません。つまり、新聞等に掲載される以前からこれらのプロジェクトが進んでいたのです。これらは、今回の輸出停止により表面化しただけに過ぎません。何事も決断が遅いといわれるわが国ですが、中国依存が高すぎるレアアースに対し、危機感を抱き既に対策をとっていたのです。例えば、トヨタ自動車が全車種ハイブリッドと公表した背景の一つに、レアアース確保のメドが立ったことがあるでしょう。トヨタ系の豊田通商が開発を進めているベトナムの鉱山は、中国南部の地層と類似しているため、ディスプロシウム(希土類磁石の耐熱性を向上させる)など中重希土(イットリウムやランタニド系のプロメチウムからルテチウム)の生産が期待されています。

しかし、アメリカのマウンテン・パスの再稼動は数年前から進められていましたが、環境基準の面から計画が大幅に遅れています。オーストラリアの鉱山も放射能除去の問題を抱えており、さらに、最終処理は中国で行うなどの話もあります。インドのレアアースは、自国で使用する原子力の燃料の副産物として分離しているため、生産量が限られているようです。カザフスタンやモンゴル、カナダなどは資源が確認されているだけで、FS等はこれからの状況です。さらに、カザフスタンとモンゴルは自国の資源戦略に伴い鉱山法による締め付けが考えられ、手放しで喜べません。ロシアのレアアース鉱山は北洋艦隊の基地に隣接しているため、開発が充分進んでいないようです。なお、加工工場をもつエストニアとフランスの情報が少なく把握しきれていません。

一方、国内においては、四国でレアアースの存在が確認されていますが、残念ながら析出技術が確立されていません。
このように、中国以外で生産拡大が期待されるレアアースですが、実は開発が進む希土類鉱山のほとんどが軽希土類(ランタニド系のセリウム?ネオジウム)やイットリウムが中心なのです。中重希土の生産はベトナム以外では期待薄なのです。この中重希土の中には、発光体(緑色)なので使われるテルビウムや、同じく発光体(赤色)なので使われるユウロビウム、希土類磁石の耐熱性を向上させるディスプロシウム、超電導に使用されるガドリウムなどが含まれています。
レアアース生産拡大で問題が全て解決できるというわけではないのです。代替が厳しい希土類ですが、最終的には、わが国が得意とする技術力でもって対応せざるを得ないのかもしれません。

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