2010年の半導体市場は全体では年間3,000億ドルの大台に乗せ、3年ぶりに過去売上記録を更新しそうだ。前年比3割を超える増収率はITバブル期の2000年以来である。ただ、個別に見ると、スマートフォン向けなど旺盛な需要を背景にNANDフラッシュは価格環境も良好な一方、4月頃まではスポット価格(DDR3 1Gb)が3$を超えていたDRAMは夏場以降価格下落が加速し、現在1.1$強まで落ちているなど、種類によって様相は大きく異なる。DRAMの想定以上の苦戦は今年の誤算の一つである。来年の半導体市場はさすがに出来すぎの今年に比べて伸びの鈍化が想定されるものの、タブレットPCやスマートフォンなど成長製品に牽引され、1桁%半ば程度の成長は可能と考えられる。
業界の話題としては、パナソニックによるパナソニック電工と三洋電機の完全子会社化に向けたTOBが実施された以外は特にサプライズのある動きはなかった。GEなど海外の業界大手はM&Aによる注力分野の強化を加速している。インフラ系の強化を標榜する国内電機大手もM&Aをもっと積極活用してもいいのではなかろうか。円高局面を上手く捉えた海外事業の買収では日本電産のように電子部品メーカーの方がアグレッシブだ。同社は8月に米国Emersonの産業/空調/家電用モータ事業を買収すると発表。地域・市場・顧客基盤が補完的な分野の強化に余念がない。同時に永久磁石の不要となる技術を手に入れた点も大きい。同社は来年もM&Aの手を緩めないとみられ、次の一手が注目・期待される。
最終製品の動向に目を転じると、リーマンショックの後遺症が残り携帯電話やデジタルカメラの販売が減少した2009年から回復し、今年は主要製品で成長軌道に回帰した。久々に国内で盛り上がったのがテレビである。今年の薄型テレビ販売台数は年初段階の業界予想では1,800万台程度と云われていた。買い替え需要が年平均で約1,000万台あるのに比べてもかなり高い予想ではあった。だが、蓋を開けてみるとエコポイント特需が想定以上で、今年は2,500万台近くまで急増する見通しだ。宴のあとの反動も激しく、来年の国内市場は今年比800?1,000万台落込むとの見方が一般的になりつつある。これも誤算の一つといえる。テレビ大手の中でもソニーは比較的グローバルに販売地域が分散されているが、シャープは日本の比重が高いことから来年度の業績への影響も大きなものとなろう。世界全体では来年も拡大基調が続くと考えられるものの、引続き新興市場頼みとならざるをえず、価格下落が一層進行すると予想される。モバイル分野ではスマートフォンが順調に拡大している。来年もココはタブレットPCとともに引続き市場成長の牽引役となりそうだ。ソニーが12月から国内でも電子書籍Readerを発売した他、シャープもタブレット型端末GALAPAGOSを投入した。国内の電子書籍市場はまだ模索段階といえる。来年は国内でも電子書籍の市場が本格的に立ち上がるかどうかは注目テーマの一つといえよう。