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アナリストコラム

2018年度以降の商業化に向けて海底資源探査が活発化 -溝上 泰吏-

2010年12月03日

海底資源探査が活発化している。太平洋の公海上ではロシア、韓国、中国などが探査を始めている。わが国は、2018年度以降の商業化に向けた調査が始まっている。第一期前半3カ年プロジェクト(?2010年度)が始動しており、㈰環境ベースライン調査、㈪環境影響予測モデルの開発、環境保全対策の検討が行われている。排他的経済水域内の開発は、申請の早いもの勝ちであるが、公海上は申請してもその内容で判断されるため、データが多い(詳細な)ほうが有利と言われている。

わが国は、「しんかい6500」や「かいこい7000㈼」など用いて幅広く探査し、環境アセスメントを進めている。更に海底をボーリングして詳細な情報を収集し、鉱床の性質や分布状況を把握しマインライフなどを割り出そうとしている。

海底資源で注目されているのは、マンガン団塊、熱水鉱床、コバルトリッチクラストである。マンガン団塊は、豊富に存在ししていることが確認されている。現在活発に調査が進められているのは熱水鉱床(活動中・停止中などを含む)である。熱水鉱床には銅や亜鉛、鉛以外に金や銀など貴金属、レアメタルなどが含まれているいわば、複雑鉱のようなもの。
熱水鉱床から海底ロボットなどを使って採鉱し、選鉱工程で3つに分類する。閃亜鉛鉱などは、成分が精鉱に近いため前処理(熱処理)だけで既存の製錬工程に投入できる。複雑硫化鉱は浮遊選鉱(ヒ素を含有していたり、粒度が細かすぎることなど課題)→精鉱→製錬工程となる。主に凝灰岩や尾鉱(ズリ)は化学処理かバイオ処理を行ってレアメタルなどを回収する。

なお、複雑硫化鉱の処理は黒鉱(複雑硫化鉱)を処理してきたDOWAホールディングス(5714)が得意とされる分野である。
また熱水鉱床での採鉱技術が確立されれば、コバルトリッチクラフト(南鳥島?マーシャル諸島流域)にも応用できるとみられている。コバルトリッチクラフトは名前のとおりコバルトの含有量が多く、他にマンガンやニッケル、白金などが含まれる。注目は燃料電池や触媒などに使われる白金である。白金の価格がもう一段高すれば、採鉱コストがなんとか賄えるレベルにあるといわれている。ただコバルトリッチクラフトは、公海域に広く分布しているので国連への鉱区申請により、早期に権益確保ができるかどうかが重要といえよう。なお、コバルトリッチクラフトからニッケルやコバルトを摘出するのに、国内で唯一電気ニッケルを生産している住友金属鉱山(5713)の技術が活用できるものと思われる。基本的に海底資源から非鉄や貴金属を取り出すのに既存の製錬メーカーに鉱石が持ち込まれる。銅や亜鉛、ニッケル価格が現状レベルでは採算が取れないが、付随するレアメタルや希少金属を含むトータルコストではその可能性が高まる。今後、わが国が資源大国になる可能性を秘めているため、海底資源調査の結果に注目したい。

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