メニュー
アナリストコラム

日経平均を象徴するもの -藤根 靖晃-

2010年11月05日

注目された米FOMCも波乱無く終わり、毎月発表される米国経済指標と為替レートを睨む展開に再び戻りそうだ。
第2四半期決算においては、前期からの反動増によって見かけ上は好況であった企業業績も、緊急経済対策による補助金が剥げ落ち、国内景気減速が明確になる中、下方トレンド入りが懸念される。

日米の金融緩和による金余りから金融相場による株高を支持する見方も一部にはある。また、来年度以降に米国経済の回復基調の顕在化とそれに伴う米国金利上昇による円安トレンドを転換点と考える向きもある。
それらの主張を否定するつもりは無いが、日本企業を取り巻く大きな構造的変化が存在する、というのが小職の考えである。

日経平均採用225銘柄を次の4つの要素から日経平均株価への影響を考え、銘柄ピックアップをした。

まずは4つの要素であるが、次の通りである。

1)日経平均株価への個別銘柄の株価寄与が大きいもの、2)日経平均の予想EPSへの寄与が大きいもの、3)日経平均との株価相関係数日足100日ベース、4)日経平均との株価相関係数週足100週。各要素の上位50社を選択し、これら4要素を全て満たしている企業を抽出した。それは次の9社である(10/20時点で得られたデータに基づく)。

電通(4324)、コマツ(6301)、ダイキン(6367)、TDK(6762)、アドバンテスト(6857)、京セラ(6971)、オリンパス(7733)、キヤノン(7751)、東京エレクトロン(8035)。

この内、電通だけが内需型の企業であり、それ以外の8社は海外売上高比率が50%を超えている。電通が日経平均との相関性が高いのは、電通が日経平均に影響を与えているというよりも電通の株価が日経平均をトレースしていることによる(電通の株価は同社業績よりも日経平均との相関性が高い)。

さて、電通以外の8社であるが、日本を代表する総合電機メーカーやソニー(6758)、パナソニック(6752)といった民生用電気機器は含まれていない。トヨタ(7203)、ホンダ(7267)といった自動車メーカーも含まれていない。
8社いずれも、中間財(TDK、京セラ)、資本財・産業用機器(コマツ、ダイキン、アドバンテスト、東京エレクトロン、オリンパス、キヤノン)である。2000年以降は日本の輸出品目に大きな変化が出ていると言われているが、自動車やテレビといった最終製品から中間財や資本財に移り変っている。日経平均株価とこうした中間財・資本財メーカーとの相関性が高いことは日経平均株価が構成銘柄の企業業績の単純な積み上げでは無く、日本経済の構造を象徴しているからかもしれない。

日本経済=日経平均の象徴銘柄として、これら8社の業績見通しは果たしてどうだろうか?
IFISコンセンサスから今期予想から来期予想のEPS成長率を求めると、コマツ20.1%、ダイキン74.6%、TDK 11.6%、アドバンテスト64.4%、京セラ −1.7%、オリンパス46.4%、キヤノン13.1%、東京エレクトロン4.7%、と京セラを除いて増益基調が続く(10/29現在)。これら8社の(単純)平均成長率も28.8%と日経平均の予想EPS増加率18.2%を大きく上回っている。

ただし、足元の業績予想トレンドには注意が必要なようだ。
来期予想EPSの10月29日現在の最新データでは、コマツ、ダイキン、東京エレクトロンの来期予想EPSは未だ上昇トレンドが残っているが、他の5社はアナリスト予想が下方トレンドに入りつつある。特にTDK、アドバンテスト、オリンパスの3社は9月下旬?10月初旬の時点から明確な下方トレンドが出てきている。

為替相場を占う点では米国経済回復が大きな要素であるが、特に資本財メーカーにとっては中国・アジア諸国をはじめとした新興国の投資姿勢に影響を受ける。新興国の高成長は何時まで続くのか? 日経平均=日本経済を占う意味では本当はこちらの方が重大ではないだろうか。

アナリストコラム一覧 TOPへ戻る