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アナリストコラム

日経平均の株数を知っていますか? -藤根 靖晃-

2010年08月13日

日経平均の株数は?と聞かれて答えられる人はまず居ないだろう。
そもそも日経平均は株価の単純平均をダウ式という除数で増資や権利落ちを調整した指数であり、株数など存在しない(あるわけがない)と殆どの人が答えるに違いない。
その答えも確かに間違いではない。

しかし、一定の前提の下に理論値(株数)を計算することも可能である。
日経新聞の「マーケット総合」面に毎日、日経平均のPERが算出されている。
と、いうことは日経平均のEPSが存在するわけであり、EPSが存在するのであればEPSの元になる売上高、営業利益、当期利益、総資産、純資産なども理論上は存在するはずである。
日経平均EPSの算出方法は、225構成銘柄の各EPSをみなし額面で調整してそれを合算し、除数で割ってやれば算出できる。
構成銘柄の各当期利益を同様にみなし額面で調整して合計し、それをEPSで割れば理論上の株数は算出できる。前期実績ベースで計算すると約2,578万株となる。仮に株価を9,300円と置くと時価総額は約240兆円である。

ここまではただの計算上のお遊びであるが、日経平均のBS/PL及び財務比率も似たような作業を行うことで算出できる。これはベンチマークに対して個別企業の株価が割安なのか割高なのかを判断する上で重要である。
一般的なDCF法による理論株価は、将来キャッシュフローの合計額を負債資本コストで割り引いたものであるが、この方法の問題点はマーケットが安いときには殆どの銘柄が”割安”となり、マーケットが高いときには殆どの銘柄が”割高”になることである。
ヒストリカルな株式リスクプレミアムと株価ベータを資本コストに用いるところに違和感を覚えている実務者も少なくは無いだろう。
全ての銘柄を同様な方法で計算して割高度・割安度を算出して比較分析を行うのであれば意味があるかもしれないが、或る時点のマーケットがつけているリスクプレミアムを反映しない限り、個別銘柄の理論株価としては不適正と考えられる。
それを解消するには、まずはマーケットの構造をより精緻に分析することが必要なはずであると考える。

ちなみに前期ベースでの日経平均の株主資本比率は29.7%、D/Eレシオは1.47倍である。これは(規制上ではなく)財務上の自己資本比率の低い銀行・証券・保険(合計20社)が含まれていることからやや歪な値になっている。これらを除いた場合は、株主資本比率38.5%、D/Eレシオ0.75倍である。

これらとインプライド・リスク・プレミアムを使って個別銘柄のバリュエーションに応用することも可能である。もちろん、個別の事業リスクと成長率をそれぞれ考慮することは必要であるが、簡易バリュエーションが作成できる(はずである)。

さて、8月26日に『これからの「日経225分析』の話をしよう”というタイトルでセミナー講演を行う(大阪証券取引所・トレイダーズ証券共同主催)。どこまでのお話をこの時点で出来るかは分からないが、自分でもチャレンジングな試みだと感じている。
ご興味の或る方は、こちらをご参照ください。
https://www.tiw.jp/news/225/

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