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アナリストコラム

還暦迎える日経平均株価。古稀は明るく御祝いしたいものです −岸 和夫−

2010年08月06日

山高ければ谷深し。株式相場は「行って来い」の30年
日本の代表的な株価指数である日経平均株価(以下、日経平均)が、今年の9月で60周年を迎えるそうだ。人間で言えば還暦である。1950年9月7日に算出・公表が開始され、その値は110円82銭。筆者は80年4月に、この世界に足を踏み入れたが(その頃は日経ダウと呼ばれており、6,500円程度であった)、丁度半分の30年間お付き合いしてきたことになる。84年に1万円に乗せた後は、85年のプラザ合意による円高、低金利を背景とした、いわゆる空前のバブル景気で、89年12月高値38,915円まで、凄まじい勢いで上昇した。89年当時は、日経平均5万円は当たり前、10万円も夢ではないという声も聞かれたが、今ではとても想像できない。その後の日経平均は、御存知のように、下げ上げを繰返しながらの典型的な下降トレンドとなり、2009年3月10日には7,054円まで売られた。古稀に向けて、今後日経平均はどのような歩みをするのだろうか。

回想。恐怖感すら覚えたブラックマンデー
89年高値に向けて爆騰を続けた日経平均だが、87年10月20日に大暴落(3,836円安。下落率14.9%。下落幅、率ともに過去最悪)を経験している。ブラックマンデーである。NYダウが突如508ドル安と大暴落、世界中の株式が売り一色となった(ブラディマンデーとも呼ばれる)。当時事業法人営業をしていた筆者は、売り気配一色となった株価ボードを、呆然と見ていた記憶がある。当日の昼休みに、当時の4大証券(野村、大和、日興、山一)の株式部長が、大蔵省(当時)に呼ばれ、NTT(87年2月株式公開)と大手鉄鋼株だけでも値を付けてくれと要請され(たという話があったようである)、後場に入り数銘柄が寄り付いた。強気でなる証券関係者も、さすがに、この時ばかりは悲観一色になりかけたが、翌日2,037円高を演じ、あっという間に息を吹き返した相場は、何事もなかったかのように、その後約2年間で日経平均は、ほぼ2倍になったのである。

岐路に立つ日本経済、株式相場だが。企業、証券税制、新規株式公開etc
還暦には「赤いちゃんちゃんこ」を着る慣わしがある。昔は生まれたばかりの子供に、魔除の力があると伝えられる赤い産着を着せていたが、そのことから赤ちゃんに還ると言われる還暦祝いに、「赤いちゃんちゃんこ」等を贈る風習になったという。つまり還暦を迎えるということは、終りではなく再生を意味するようである。奇しくも日経平均が還暦を迎える。今後10年、日本経済、株式相場は再生に向かうのか、このまま終わってしまうのか、まさに岐路に立っていると言えよう。証券関係者も、今後何をなすべきか、考えるにいい機会である。

政策に多くを期待できない現状では、日本経済、相場再生のために、企業に頑張ってもらわざるをえないだろう。日本企業の持つ潜在能力、潜在成長力は、まだまだ捨てたものではないと思う。和洋折衷の経営を駆使できる強みを持つ日本企業には、自信を持って日本経済、世界経済の成長に貢献する懐の深い強い(単に利益を上げるだけではない)企業を目指してもらいたい。当然経営者の資質、リーダーシップが格段に重要となる(そのような企業の経営者であれば、年収1億円以上でも高くはないであろう)。勿論政策面での後方支援も必要であるが、W杯サッカーで岡田前監督が目指したベスト4ならば、十分いける力がある日本企業は少なくないと思う。

株式投資をする側にとっては、現在の証券税制は、難解(少なくとも筆者には)と言わざるをえない。株式投資を促進するためには、もっとシンプルに改革する必要があると思う。そして多くの方が指摘しているように、直ぐにも着手すべきは、株式の配当に対して、法人税と所得税が重複して課せられている二重課税の解消であろう。株式配当は、株式の中長期投資、中長期保有の観点から欠かせない重要なファクターの一つである。最近あらためて日本の法人税率が高いことが指摘されているが、例えば株式配当に積極的な企業に対しては、法人税率を優遇するということは出来ないのだろうか。

そして新規株式公開(IPO)、新しい企業の育成である。現在の新興市場の中心である東証マザーズは99年11月に、それに先んじる形で6月に大証ヘラクレス(設立当初はナスダック・ジャパン)が開設された。新興市場開設の本来の趣旨は、従来の市場では上場が難しい企業に対して株式市場を門戸開放し、上場を果たすことで、企業の育成、成長を促していくことだったように思う。今や投資家保護が最優先され、上場に際しかなり制約が多いようである。これでは角を矯めて牛を殺す結果となってはいないだろうか。収益が良くて、成長性もあり、当面資金に余裕があるような企業の中には、上場への制約も多いし、相場も良くないから、無理することないと考え、上場を見合わせているところも結講あるように思うのだが。反社会的勢力との関係がないこと、会計に不正がないことを大前提に、投資家の自己責任を徹底することで、本来の姿に戻る必要があろう。

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