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アナリストコラム

二酸化炭素、発電時に放出しなくとも、製造工程で大量放出では意味あるの!? −溝上 泰吏−

2010年06月18日

地球温暖化といえば、二酸化炭素、発電(電力)と連想されます。クリーンエネルギーの代表として太陽光発電や風力発電など新聞やテレビ、雑誌などで眼にする機会が増えました。しかし、私はライフ・サイクル・アセスメント(製造から廃棄までの間の環境負荷…この場合、二酸化炭素の排出量…を考慮したもの)の観点から火力発電所に次いで悪い太陽光発電や風力発電を高く評価できません(両方ともイメージはいいのですが…如何せん、発電効率が悪すぎます)。それでは、何に期待しているのか。発電効率の良い原子力発電も良いのですが、将来、放射能廃棄物をどのように処理するのか問題が残ります。地中深くに埋める…でも、自宅付近に埋めて欲しくない(総論賛成各論反対)…色々問題は残ります。

そこで私が注目するのは海洋温度差発電(OTEC)です。海洋の深海部と表層部の温度差(15度以上)を利用して発電するシステムです。燃料にあたるのが温度差なので二酸化炭素をまったく放出しません。さらにOTECで注目すべき点は、天候に左右されず安定的に電力を得られることや、海水淡水化プラントを併設できることです。逆に欠点は初期投資が割高だと言うことです。ただし、ランニングコストはインドNIOT(インド国立海洋技術研究所)の試算(50MWで7.9円/kWh、100MWで6.8円/kWh)ではディーゼル発電や火力発電などに比べ低く押さえることができるようです。これは、海水を利用しているため燃料代がかからないからです(海水をくみ上げる電力は自ら発電するため、正味出力は61?64%程度)。

1881年にフランスで研究が始まったOTECは、ランキンサイクルやカリーナサイクルなどいくつかの方式が開発されてきました。なかでも注目したいのは世界で最も効率が良いと評価(NEWTON、02年8月号)されたウエハラサイクルです。ウエハラサイクルを使った実験プラントが佐賀県の伊万里(海洋エネルギー研究センター)にあり、私も03年10月に日本チタン協会の専務理事と訪問したことがありますが、中東や太平洋諸国、中国・アジアを中心に世界各国から同施設の見学に訪れているようです。

太平洋諸国の中には、既に設置個所を決めている国もありますが、資金的に困難であることから未だ実用化に至っていません(わが国のODAは実績のないプラントには適用されません)。このため、OTECの実用化に関しては、過去に大規模な実験を行ったことがあるフランスと米国の動向が注目されます。また、中東諸国は、既存の海水淡水化プラントの廃熱を利用した海水淡水化(DTEC:廃熱温度差発電の応用)に関心が高いようです。DTECは、既存の設備に併設するため、設置場所が制約されるので小規模なものになりますが、国内の某石油化学メーカーが既に採用しています。このほかにも温泉水温度差発電(STEC)、雪解け水を利用した冷熱温度差発電(CTEC)などもあり、どのようなケースでもあっても温度差が得られれば、発電できる可能性があります。

世界には、電力不足や水不足に苦しんでいる国(インドや中国など)が存在します。問題解決にOTECの技術が早く役立つことを願う。

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